そんな新型『ボクスター』の心臓に火を入れる。ベーシックバージョンたる“ボクスター”が2.7リッター、ハイパワー版の“ボクスターS”が3.2リッターのフラット6エンジンを搭載、というのは、従来通りの展開だ。
新型ボクスターに用意をされるMTは前者用が5速で後者用は6速仕様。ただし、今回の国際試乗会に用意をされたモデルは、“ボクスター”もオプション設定の6速MTを装着していた。
当然ながら、もっとも強力な加速を味わわせてくれるのは「“S”のMT仕様」ということになる。このモデルが発表する0-100km/hデータは5.5秒。最高速も268km/hに達するから、それはまさに一級スポーツカーにふさわしい快速ぶりといってよいだろう。
2.7リッターモデルの加速感も、前述のようにテスト車が6速MTを採用していたこともあってかなかなかにダイナミックでゴキゲンだ。ボクスターならではの加速サウンドが従来型よりもクリア度を増して感じられたのも印象的には大きなプラス。新型用のエンジンは、吸排気系のリファインで出力アップを実現していると同時に、エアフィルターケース内に“調音”用のデバイスを採用するなどで心地よいサウンドにも磨きをかけているのである。
いっぽうで「ちょっと惜しいな」と感じたのは、ATに進化が感じられなかったこと。このところの最新ATがより多段化の道を歩むにもかかわらず、このクルマのそれは相変らず5速のまま。しかも、全力加速以外のシーンでは2速発進の制御を行なうから、実質的には通常時は“4速AT”としてしか機能しない。結果、シフトのたびの大きなエンジン回転の変動にやや旧態依然とした印象が免れないのだ。
じつは現在、ポルシェには「近い将来VW/アウディの“DSG”のような、ツインクラッチ式の新トランスミッションを採用する」というウワサがある。果たして今回ティプトロニックが“置き去り”にされたことは、それと関係があると受け取ってよいのであろうか…。(つづく)