今回のテスト車にはまた、標準サイズ+1インチアップのシューズと、すでに新型『911』にも設定された電子制御式の可変減衰力ダンパー“PASM”が、それぞれオプション装着されていた。
“ボクスター”で18インチ、“ボクスターS”では19インチと、従来型の初期モデルからすればそれぞれ2インチ増しにもなる“大径シューズ”を履く今回のテスト車。が、「さすがにちょっとオーバーサイズではないのか」というボクの心配をよそに、新型『ボクスター』の足まわりは高度の走りのポテンシャルと優れた快適性を両立して味わわせてくれることになった。
兄貴分である新型911の、走りのシーンを選ばない4輪接地感の高さにも驚かされたばかりだが、そうした嬉しい意味での驚嘆をこのクルマでも再び味わうことができたのだ。重量的にはハンディキャップを負うはずの19インチシューズを履く“S”でも、ばね下は路面凹凸に見事に追従する。その動きは「軽やか」と表現をしてもよいくらい。乗り心地も、決してソフトとはいえないものの「しなやか」というフレーズはじゅうぶん当てはめることができる印象だ。
いっぽう、わずかなステアリング操作に対する挙動のシャープさは、911のそれをも凌ぐ印象。とくに19インチシューズを履いた“S”のノーズの動きの機敏さは、いかにもミッドシップスポーツカーらしいリニアでダイレクト感に溢れたものと評することができる。ブレーキはもちろん、ポルシェ流儀のカチッとした剛性感の高さと圧倒的な減速パワーが売り物。高価なオプションにはなるが、これまでは『カレラGT』や『911 GT3』、『911ターボ』など超高性能モデルに限って設定されてきたセラミックコンポジットブレーキ(PCCB)が選択可能になったのもニュースのひとつといえる。
こうして、走りのポテンシャルをさらに磨き上げた上で、50km/hまでのスピードであればソフトトップの開閉操作を続行できるロジックを取り入れるなど、さらに利便性もアップさせることになったこの新型ボクスター。世界でまたまたポルシェフリークを増やす原動力となるのは確実だ。