ガソリンスタンドで給油代金を払わずに逃走し、これを追跡するためにクルマにしがみついた従業員を振り落として重傷を負わせたとして、強盗殺人未遂などの罪に問われた22歳の男と、23歳の女に、裁判所は懲役12年と9年の実刑を命じた。
判決公判は11月30日、神戸地裁で開かれた。
問題の事件は昨年10月3日に発生している。同日の午後1時45分ごろ、神戸市東灘区青木5丁目付近のガソリンスタンドで、ハイオク約7000円分の給油を行ったクルマが代金を払わずに発進した。
この店で店長を務める57歳(当時)の男性が、両手を広げて逃走を阻止しようとしたが、クルマを運転していた若い男は躊躇なく店長をはねた。
クルマは男性をボンネットに乗せたまま走行。男性はクルマのボンネットにしがみつくなどして、男を逃がさないよう必死に抵抗したが、運転する男は蛇行などを執拗に繰り返した末、急ブレーキを掛け約750m先で男性を振り落とし、再度ひいて逃げた。男性はこれによって全治数カ月の重傷を負った。
警察では目撃情報などから捜査を続けた結果、尼崎市内に在住していた21歳(当時)の男が犯行に関与した可能性が高いと判断。取り調べの結果、犯行を認めたために強盗殺人未遂容疑で逮捕。
同乗していた女も逃走を止めさせなかったとして、同容疑で逮捕されている。
11月30日に開かれた判決公判で、神戸地裁の森岡安広裁判長は「被告は被害者がしがみついたことを認識しながら、約750mに渡って蛇行運転を繰り返している。被害者が死に至る可能性も強く認識した上の行動であり、非常に悪質」と指摘。
同乗していた女に対しても「行為を止めておらず、共謀したと認識せざる得ない」として、運転していた男に対して懲役12年を。同乗していた女には同9年の判決を言い渡した。