実際に起きた交通事故の現場検証で撮影された写真が静岡県内にある51カ所の公認自動車教習所に配布され、教材として使用されていた。静岡県警では「遺族への了承が取れていない可能性がある」として、これらの使用自粛を呼びかけている。
静岡県警・運転免許課が8日、明らかにした。問題の写真は1991年ごろ、同課に対して静岡県指定自動車教習所協会から「事故の悲惨さを伝えるための教材用として使用したいので、事故現場の写真を提供してほしい」と申し出があり、当時の幹部がこれに了承してアルバム形式で提供していた。
アルバムには、1990年以前に事故現場で撮影された44枚の写真が収められていたが、このうち7枚は事故被害者の遺体を被写体としたものだった。衝突の衝撃で手足が欠損したり、炎上した車内に取り残されて焼死したものなど、かなりショッキングなものが3枚含まれていたという。
配布された当時は実際に教材として使われていたが、今では28の教習所で卒業検定終了後、希望者を対象に閲覧させる状態になっている。
だが、今年秋、県東部の教習所に通っていた人から、一部のマスコミに対して「倫理上の問題があるし、死体写真を見せることが事故抑止につながるとは思えない」という通報が入り、そうした写真が広く出回っているという事実が発覚した。
県警に対して「どういう経緯でこれが出回ったのか?」、「被写体となった人の遺族に教材として写真を使う了承を得ているのか?」などの質問が寄せられていた。
当初、県警本部の運転免許課では「写真がどのような経路で流出したのか不明」と回答。不正に流出した可能性も匂わせていたが、その後の調査で運転免許課から直接手渡されていたことを公式に認め、「配慮が足らなかった」と謝罪している。
ただし、1991年当時に誰が関わっていたのかは判明しておらず、配布がなされた経緯については「当時、静岡県内では死亡事故が増加傾向にあり、事故を起こしたときの悲惨さを知ってもらうために教材として使うことを了承したのではないか」と推測している。
が、遺族への了承を取ったかについては「資料も無く、一切確認できない」とコメントしている。
また、運転免許課では「責任の所在がはっきりしない以上、今後の使用は自粛してほしい」と各教習所に呼びかけており、全量回収も視野に入れているようだ。