深い哀悼の意…パトカー追跡事故で警察と遺族が和解

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2001年12月、長野県長野市内でパトカーの追跡を受けていたクルマが高速度で逃走中、赤信号を無視して進入した交差点で他車と衝突し、2人が死亡していた事故で、このうちの1遺族が長野県を相手に起こしていた損害賠償請求(民事)について、12月28日に東京高裁で和解が成立していたことがわかった。県は死亡した2人に哀悼の意を表し、今後の同種事故の再発防止や追跡マニュアルを作成。遺族側は県に対する賠償請求を放棄するなどとなっている。

問題の事故は2001年12月1日未明に起きた。長野市内の国道18号線でフラフラとした挙動で走るクルマを長野県警・長野中央署のパトカーが発見。停止を求めたが、クルマは120km/hまでスピードを上げて逃走を開始した。

逃走したクルマを前走車を追い越すために対向車線を走行。そのまま交差点に進入して順走していたクルマと衝突。このクルマを運転していた20歳の女性と、18歳の男性が死亡している。警察に発見された当時、クルマを運転していたのは当時24歳のブラジル国籍の男で無免許。衝突事故の直前、警察に捕まることを覚悟して運転を交替した22歳の男も酒気帯び状態だった。

遺族は「パトカーの無理な追跡が無ければ事故は起きなかった。責任の一端は警察にもある」として、衝突事故を起こしたクルマの運転手と警察(県)が連帯して賠償金を支払う必要があるとして提訴。しかし、一審の長野地裁では「分離して判断する必要がある」として、クルマを運転していた男と、警察の審理をそれぞれ別のものとした上で、実際に事故を起こした男に対してのみ、賠償金の支払命令を出した。遺族は「警察を含めた三者一体で責任を確定すべきであり、審理が尽くされたとはいえない」と主張し、控訴審では一審への差し戻し判決を求めていた。

和解では「長野県は死亡した2人に対して深い哀悼の意を表す」、「長野県は同種の追跡による事故の再発防止に努める」、「長野県は警察官に対し、パトカーによる追跡の方法についての指導や教育を徹底する」との条項が設けられ、「これが守られることによって原告は県に対する損害賠償の請求を放棄する」という内容となった。

これに先立ち、12月13日には長野県議会で県警本部長が事故で死亡した2人の名前を読み上げ、哀悼の意を示している。

パトカー追跡が原因とする事故は後を絶たないが、警察側にしてみれば「容疑者を取り逃がしたくない」という意識が強く働き、結果としてそれが事故を誘発する無理な追跡につながっているという指摘もある。

《石田真一》

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