責任は青信号を遵守したクルマにもあり

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検察庁・大阪地検は7日、信号無視を原因とする死亡交通事故について、青信号で走行していたクルマの前方不注意が事故原因のひとつとして、これまでの不起訴判断を撤回。運転していた男を先月までに在宅起訴していたことを明らかにした。

問題の事故は2003年2月16日の午前3時30分ごろ発生した。

門真市桑才新町の府道(通称:大阪中央環状線)交差点で、兵庫県伊丹市内に在住していた33歳(当時)男性の運転するクルマが赤信号を無視して交差点に進入。青信号に従って府道を走行していた豊中市内に住む31歳(当時)男性が運転するクルマと衝突した。

双方のクルマは大破し、赤信号を無視した側のクルマに乗っていた運転者を含む2人が死亡した。

捜査を行った大阪府警・門真署は2004年1月、業務上過失致死容疑で双方の運転者を書類送検した。

そして大阪地検は青信号側のクルマを運転していた運転者を「赤信号を無視して進行するクルマの存在破予測できない」として、嫌疑不十分で不起訴処分に、赤信号を無視したクルマの運転者は被疑者死亡で同様に不起訴となった。

しかし、赤信号を無視したとされるクルマを運転していた男性の遺族は「事故現場は普通の交差点ではなく、クルマの破損状況から青信号側のクルマの速度超過が事故原因のひとつになった可能性が高い」として、同年6月に大阪第二検察審査会に相手の不起訴処分を不服とする申し立てを行った。

大阪地検は審査会の判断を待たず、担当者を変えて再捜査を実施。この結果として、新たな事実が浮上した。

赤信号を無視したとされるクルマは近畿自動車道・門真インターチェンジを降りて出口車線を走っていた。この車線は出口から約250m走行したところにある交差点(事故現場)で府道に合流するが、この交差点の手前約100mから出口車線は府道と平行している。

合流する交差点には信号機が設置されているが、死亡した31歳の男性は現場の地理に不慣れであったことや、複雑な道路形状も相まって、検察は「死亡した男性が前方信号機の表示を自分に対しての停止を意味するものとは気づかなかった」と仮定。

信号表示が自分に対するものと気づかなかった男性は、交差点手前で約20km/hの速度まで徐行して交差点に進入し、ここで青信号に従って走行してきたクルマが信号無視をしたクルマの側面に衝突した。

このことは信号無視をしていたクルマが先に交差点に進入したことを意味する。

府道は60km/h制限だったが、青信号側のクルマは交通量の少ない時間帯であることから、90km/h以上の速度で進行。

さらに事故現場となった交差点を過ぎると高架橋に進入する道路形状になっており、出口車線が暗いことから運転者が手前の交差点の存在に関心をあまり持たず、街路灯もある約200m前方の高架橋入口しか注視してなかった可能性も検証の結果から推測した。

検察では現場検証の結果から「青信号側のクルマが制限速度以下で走行していた場合、事故現場の約50-100m手前で右側の合流車線を走行するクルマの存在を認識できた」、「交差点の存在に関心を持ち、制限速度以下の速度で走行していれば赤信号を無視してクルマが先に進入した場合にも急ブレーキなどで事故を回避、または被害を軽減できた可能性が高い」と最終的に判断。

相手側が赤信号を無視して進行するという「信頼原則」に反していたことは認めるものの、青信号側のクルマにも著しい速度超過と前方不注意の過失が生じていたとして、これまでの不起訴判断を撤回。青信号側のクルマを運転していた男を業務上過失致死罪で在宅起訴した。

青信号を遵守していたクルマの責任が問われるのは奇異に思えるが、今回の事故現場はいわゆる十字路交差点ではなかったこと、そして90km/h以上という高速度で走行していたことが、赤信号無視と同列の危険性があると判断されたわけだ。

《石田真一》

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