保育園の屋上に設置された駐車場から乗用車が転落し、園児2人が死傷した事故で、死亡した園児の遺族が保育園やその幹部、クルマの運転者を相手に総額1億3000万円あまりの損害賠償を求めた訴訟(民事)の判決が29日、名古屋地裁で行われた。
裁判所は法人と運転者に5874万円の支払いを命じている。
問題の事故は2002年9月18日に発生している。
同日の午後4時5分ごろ、名古屋市緑区有松町桶狭間付近にある私立保育園で、屋上に設置された駐車場から75歳(当時)の男性が運転するワゴン車が金属製の柵へ2回に渡って衝突。これを突き破って約3.6m下の園庭に転落した。
園庭では延長保育実施のため、職員が園児を並べて点呼を行っていたが、落ちたクルマは園児を直撃。このうち2人が下敷きとなり、3歳の女児が死亡。1人が重傷を負った。
現場となった駐車場では、この事故以前にもクルマが衝突する別の事故が発生しており、遺族側は「屋上に駐車場を設置する構造に無理があり、実際に事故が起きていたことからも事故発生は予見できた」として、保育園を経営する社会福祉法人とその代表理事と園長、運転していた男性を相手に総額1億3000万円あまりの損害賠償を求める訴訟を起こした。
保育園側は「事故は想定外の異常な状況で起きており、予見性は無かった」と主張していた。
29日に行われた判決で、名古屋地裁の島田周平裁判長は「設置されていた柵の強度は国土交通省の定めた転落防止基準を大幅に下回っていた」と指摘。アクセルとブレーキの踏み間違いや、シフトレバー誤操作によって暴走したクルマの転落を防止する強度が無かったことを認めた。
その上で「設置されていた柵は衝突によるクルマの転落を防止するには不十分。落下を防止するための柵は多数の園児の命を守る生命線でもあり、その強度や駐車場の構造をも含め、高度の安全性が要求される」として、屋上駐車場の設置を決めた社会福祉法人に事故の責任があることを認めた。
だが、その一方で「駐車場の設置は理事会の決定でしたことであり、代表理事や園長に責任はない」と否定。賠償はクルマを運転していた男性と、社会福祉法人の連帯で行うことが相当と結論づけ、この2者に5874万円の支払いを命じている。
遺族側は代表理事と園長の責任が認められなかったことを不服として、控訴する方針。