トヨタの開発担当者にも申し上げたが、これは単なる「手直し」にすぎない。市場データの表層に現れた弱点を対策し、外観も内装も「初代の姿カタチを引き継ぎつつ、新しく見えるように」修正し、コストはさらに削り落とす。これら作業項目を、各個に、かつ淡白に進めた結果は「デフォルメされた『ヴィッツ』」。
「改良」は後席空間を少し広げたことぐらいだが、シートはその後ろも前も劣悪。
先代は、不毛が続いたトヨタの小型車を刷新すべく、海外生産などの新戦略も織り込んだ革新プロジェクトの成果だった。しかしフットワークは「画竜点睛を欠いた」。それは確実に継承され、さらに足が突っ張ってぎこちなさを増した。
パワーパッケージは力感いっそう希薄で雑。『プリウス』に続く“換骨奪胎”である。「今、何を実現するために、このクルマを生み出すのか」。そこを深く掘り下げることなく、自動車社会の主幹たるべきクルマを作ってはいけない。
■5つ星評価
パッケージング:★★☆☆☆
インテリア/居住性:★★☆☆☆
パワーソース:★★☆☆☆
フットワーク:★★☆☆☆
オススメ度:★☆☆☆☆
両角岳彦| 自動車評論家
1951年長野県松本市生まれ。モノごころついた時からクルマが好き。大学・大学院と自動車工学を修め、自動車専門誌を経て独立。現在は徳大寺自動車文化研究所・主任研究員としてディーゼル排気浄化システムの開発に注力中。