レクサス誕生で大きく揺れる“ラグジュアリー・セダン市場”。日産はあえて、インフィニティを国内投入しない。「ニッサンブランドとして売るからには、それほど値段が高くならない。よくよく(他車と)見比べてみると、『フーガ』450GTはお買い得に感じて頂けるはずです」。日産自動車マーケティング本部のダイレクター・加治慶光さんは自信を見せる。
事実、この4.5リッターV8を待っていた人が大勢いた。8月17日の発売と同時に、受注は日産の予想以上に好調だ。すでにインフィニティ『M45』としてV8搭載フーガはアメリカ(今年3月発売)で人気を博している。ではどうして、2.5リッター、3.5リッター発売から1年近くたった今、450GTを投入するのか。やはりレクサスへの対抗なのか?
「モデルライフの中での選択肢を充実させたということです。フーガは(日産にとって)まったく新しいクルマなので当然、低価格車から導入しました。生産能力についても3.5リッターで地ならしをして、4.5リッターのメインマーケットであるアメリカ向けをまずリリースしてから、日本仕様のモデル展開を想定しました。また、強豪(レクサス)への意識もあります。日本で(フーガの4.5リッターV8を)求めているお客さんはいる。日産として、そこに経済合理性があると判断したので、最終的に日本で提供することを決めました」
マーケットの流れについてはこう解析している。「国内の300万円以上のマーケットは全新車台数の約15%で推移している。この先5年間も、その程度の割合を維持すると予想しています。そうすると(必然的に)300万円市場の国産モデルの比率が高くなる。メルセデスとBMWは当然高値。そこにレクサスが入る。日産はニッサンブランドとして売っている以上はそれほど値段が高くない。世の中的に高いクルマへの興味が増えても、(経済動向によるが)300万円以上買える人は思ったほど増えない。よくよく比べて見ると日産車はお買い得なのです」。
450GTは554.4万円。19インチタイヤ装着のスポーツパッケージでは567万円。パワフル333ps・V8搭載で本木目をふんだんに盛り込んだ上質インテリアを備え、この価格。たしかに、フーガ450GTのコストパフォーマンスは高そうだ。(つづく)