確かに、レクサス『GS』350は全域でトルクフルだ。だがその本当の魅力は6000rpm以上で炸裂する。ガッシリとした粘り感が6800rpmのレブリミットまで芳醇な美酒を味わうかのようだ。
V型6気筒3.5リッターDOHC、2GR-FSE型エンジン。クラウン搭載の3GR-FSE型(3リッター)から大幅な進化を遂げている。その詳細について、トヨタ自動車・パワートレーン本部の八重尾享さんに聞いた。
「D-4と呼ばれるシステムの3リッターは、燃料を燃焼室内に直接噴射し、気化熱を利用して気筒内を冷却。そしてより多くの空気を取り込むことができます。そうすることでノッキングが発生しづらくなり、圧縮比を上げられるのです。その結果、高出力と低燃費が可能となりました」。その3GRユニットをベースとして、ボアを87.5mmから94mmに拡大。圧縮比は11.5から11.8にアップ。最高出力は256psから一気に315psへ。最大トルクも32.0kgmから38.4kgmへと大幅に太った。
馬力&トルクアップの最重要ポイントは、吸気システムとインジェクターにある。再び八重尾さんに聞く。「直噴エンジンは、空気の流れをコントロールしないとミキシングが悪く、(燃焼室内の混合気が)よく燃えません。そこで、これまではスワールコントロールバルブ(SCV)を装着し、吸気ポートの形状も工夫してわざと気流を乱していました。今回はSCVを取り除いたことで、空気の流入量が増えます。そうなると、いままで燃焼が悪かった場所がクローズアップされる。そこで、吸気ポートにもうひとつインジェクターを追加し、筒内インジェクターの噴霧形状を変えました。いままでスリットで横方向噴射。今回から縦にW方向で噴霧させています」
気筒あたり2個、合計12個の高効率インジェクターが理想的な吸気を発生。新開発D-4Sは高回転域で究極の迫力を創出するのだ。(つづく)