「しなやかで美しい、気品が感じられるコンパクトセダンを作りたかった」。トヨタの新コンパクトセダン『ベルタ』(28日発表)を開発した古山淳一氏は語る。
「とくに重視したのは、エクステリアデザインです。低予算で買える、ボディサイズが小さいといった、消去法で選ばれるクルマにはしたくなかった。予算やボディサイズではなく、純粋に“このクルマがほしい”と思ってもらえるようなモデルにしようと思ったんです」(古山氏)
トヨタは99年、旧型『ヴィッツ』をベースとするコンパクトセダン『プラッツ』を発売した。狭いながらも大人4人がしっかり着座できるというヴィッツ譲りの室内空間とフルサイズセダン並みの大容量トランクを持つという、先進的なコンセプトを持っていた。
が、2ボックスを前提としたきわめて強い前傾姿勢を特徴とするヴィッツのドアを丸ごと流用することを強いられた結果、バランスが悪いこと甚だしいフォルムになってしまった。
トヨタ関係者によれば「スタイリング重視というベルタのコンセプトの背景には、プラッツの失敗についての反省があった」とのこと。古山氏はプラッツのデザインについては評価を避けたが、「ベルタのデザインは(その流れの中で)われわれが出した結果だと思ってください」と、デザインへのこだわりの原動力となったことは認める。
「開発のあいだ、美しいデザインを作るというコンセプトについては、珍しいくらい最初から最後まで全然ブレませんでした」(古山氏)
ヴィッツのコンポーネンツを利用しながらも、ホイールベースは先にデビューした『ラクティス』と同じ2550mmに延長。プレス部品についてもインナーパネルを含め、すべてオリジナルデザインで仕上げた。結果、ベルタはコンパクトセダンとしては相当にバランスのいいプロポーションを手に入れることができたのである。