3 | 進化はどこまで、いつまで? |
ところで、日本の造形美に話は戻るが、新型エスティマはこうした難度の高いデザインテーマに対して、明確に回答が出せたおそらく最初のクルマではないかと思う。
思い返すと、初代の開発がスタートして少なくとも18年にわたって、エスティマでは造形テーマやコンセプトに大きな変更が無い。このようなモデルは、トヨタではエスティマが唯一だろう。
長い年月にわたり一貫したデザインテーマを追求すれば、ユーザーのニーズを熟知し、最適なデザイン解を得ることができる。そしてその結果として、さらに一段と高いレベルの造形に到達できることを新型エスティマは証明した。
モデルチェンジごとに過去の実績を否定し、それまでと全く異なる新規の造形テーマに変更してしまうのでは、到達できないレベルの思想と質が問われる時代になったのだ。
しかし一方で、カーデザインでは忘れてならないことがいくつかある。ひとつは、クルマは都会の街並や、古都や自然の景観の一部になるということ。もうひとつは自動車の100年の歴史で、人々の感性にインプットされた「クルマらしさ」のイメージにどう応えるかである。
東京お台場のメガウェブで行われた発表会でスポットライトを浴びた新型エスティマを見たとき、トヨタは航空機、しかも飛び切りなまめかしいカタチのジェット機を造ろうとしているのではないか、そういう思いが頭をよぎった。トヨタはクルマのカタチをいつまでデザインし続けるのだろうか。気になる。