日本ではフィアット/フェラーリの会長として知られるルカ・ディ・モンテゼーモロと、ピニンファリーナのCEOであるアンドレア・ピニンファリーナが、ここ数日窮地に立たされている。
事の発端は18日、北部ヴィチェンツァで行なわれたイタリア工業連盟(コンフィンドゥストリア)の大会。日本の経団連に相当するこの経営者団体で、モンテゼーモロは会長、ピニンファリーナは副会長を務めている。
その日は、総選挙を4月初旬に控えたベルルスコーニ首相をゲストとして呼び、政策について聞くという企画だった。
壇上で首相は、自らの政策に懐疑的な新聞を攻撃。やがて矛先は、有名な高級靴メーカー『トッズ』の会長で、首相に対して批判的なディエゴ・デラバッレに向けられた。2人は昨年、公営放送のテレビ討論番組でも衝突した犬猿の仲。ちなみにサッカーでも、ベルルスコーニはACミラン、デラヴァッレはフィオレンティーナのオーナーと、対立する立場にある。
そのため最後には、「デラヴァッレよ、首相に向かって話すときは、『お前』ではなく、ちゃんと『あなた』と敬称で呼べ!」と言い放つに至った。会場前列で聴いていたデラバッレは激怒。2日後の20日月曜日に、工業連盟の役員を突如辞任した。
アンドレア・ピニンファリーナは首相発言を「民主主義への挑戦」と定義。「(首相)はもういちど大学に入り直したほうがいい」とコメントした。
さらに困惑したのは、モンテゼーモロである。彼はトッズの役員を兼任しているほど、デラヴァッレとは親友である。閉会直後のインタビューでは「一市民としても、工業連盟会長としても、コメントを差し控えたい」と直接の感想を避けた。
フェラーリF1はマレーシアGPで表彰台を逃し、自らが会長を務める経済団体は大混乱。モンテゼーモロにとっては、踏んだり蹴ったりの週末となってしまった。