ひき逃げされたのは、ナイフで刺されて歩行能力を失ったから

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1990年10月に東京都足立区で口論の相手をナイフで刺したとして、殺人や窃盗の罪に問われた57歳の男に対する判決公判が10日、東京地裁で行われた。裁判所は被告に対して殺人罪について懲役13年、窃盗罪では懲役1年2カ月を言い渡している。

問題の事件は1990年11月12日に発生している。同日の未明、足立区佐野1丁目付近の都道で、当時56歳の男性がクルマにひき逃げされ、頭部損傷が原因で死亡した。

だが、この男性は事故の前に腹や背中を刃物で刺され、これが致命傷となっていたことが後に判明。男性は刺されて路上に倒れこんだところをクルマにひき逃げされた可能性が高くなった。現場から約300m離れた場所で男性を刺したとみられる果物ナイフも発見。これには男性とは別の、容疑者とみられる血痕も付着していた。

現場近くのスナックでナイフを見せびらかしていた男がおり、警察ではこの男の血液を採取してDNA鑑定を実施したものの、「2つのサンプルが酷似している」という結果を得られたのみで個人の特定には至らなかった。

結局、事件は未解決のままとなっていたが、時効まであと1カ月となった昨年10月、この男が別の窃盗罪で逮捕・起訴されたことから、任意捜査の一環として最新の技術で再鑑定を実施。この結果「2つのサンプルは同一」と判断され、男は殺人容疑でも逮捕された。15年の間に技術が進歩したことが大きかった。

殺人罪の公判においては、争点を初公判前に絞る「公判前整理手続き」を適用。東京地裁が殺人罪で同手続きを使うのは今回が初となった。争点は「被告が容疑者か否か」、「被害者の刺し傷と死亡に因果関係があるのか」という2点のみ。検察側は「被告が容疑者で、死亡との因果関係あり」、被告側は「被害者死亡はひき逃げよるもので、因果関係なし」というのが主張の柱となっている。

10日行われた判決公判で、東京地裁の川口政明裁判長は「犯行前に被告がナイフを見せびらかし、口論の発展から被害者の腹部を刺したことは認めている」と指摘。「被害者は腹部や背中を刺されたことで歩行能力をほぼ失って車道に転倒。これが原因でクルマにはねられることになったのは明らか」として、刺し傷と死亡との因果関係も認め、殺人罪については懲役13年の実刑を、窃盗罪については懲役1年2カ月の実刑を命じた。判決が二つになったのは、各事件に確定的な関係が無いことによる。

《石田真一》

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