【AutoStanding】米国最新事情:急増・新車見積りウェブサイト

自動車 ビジネス 企業動向

『Automotive News』は、75年以上の歴史を持つ米国を代表する自動車専門誌であり、8万人以上の読者に自動車業界のニュースを毎週届けている。この雑誌の2006年6月5日号で、米国における最新のインターネット新車見積もりサイト急増について取り上げられているので紹介したい。

◆記事の概要

「自動車の小売において、ドットコムブームが戻ってきた」という見出しをもとに、WhyPaySticker.comやDealersCompeteYouWin.com、SecretCarBuyingTips.comなどの新興オンライン新車見積りサービス提供事業者を紹介している。新興勢力の特徴は以下の通り。

1. 仕入れ=個人からの見積り依頼情報仕入

URLから想像つくかもしれないが、グーグルなどの検索エンジンを通じた個人が主要な仕入れ元。検索により引っかかり易い名前をURLのみならずサイトに散りばめることで、今や老舗であるautobytel(オートバイテル)などのサイトに個人が行き着く前に捕らえる工夫をしている。

2. 販売=当該情報の販売

多くの場合は、ディーラーに直接見積もり依頼を転送する形でデータ販売をするのではなく、上述のautobytelなど「既にディーラーとの間でネットワークを構築しているサイト」に卸売する形。 

3. 手数料

ディーラーが通常見積依頼1件に対して支払う金額が20ドル程度(約2300円)。新興勢力から老舗サイトへの卸売は1件3−6ドル(約350−700円)。

およそ新興勢力のサイトの作りはシンプルで、ディーラーに対するネットワーク構築への投資やメディアを通じた広告宣伝なども行わないため、コストを最小化することが可能となっている。よって、薄利でも事業が成り立つものと想像される。

なお、一般的なディーラーは1店当り月間37件の見積もり依頼を受けるとのことで、この数字は2003年の33件から増加しているとのこと。また、見積りが実際に販売に結びつく成約率は18%程度となっている。

◆市場における仲裁(アービトレーション)と持続可能性(サステイナビリティ)

ディーラー店頭で必死に毎日の売上をあげるために頑張っている経営者や営業マンからすると、こうしたデータの卸売事業に特化したやり方に憤りを感じることもあるだろう。

しかし、そこに情報を購入するという実需が存在し、その実需を満たすための情報の格差や地理的格差などが存在している限り、こうした事業者は必ず現れる。情報の仲介であり、市場における鞘を抜こうとするアービトレーション行為が行われることは必然であろう。

ただ、これらの事業者が生き残るには、ユーザーが欲する情報をより正確に捉え続け、ユーザーから見て一番楽に必要情報(この場合は、新車価格見積り情報)へアクセスできるツールであり続けることが、必要な条件である。

単純に「検索エンジンを通じたユーザーからのアクセスを最大化する」という行為のみを取れば、他社の模倣が比較的安易な手法であり、参入障壁は低い。

当該新興勢力(新車見積卸売事業者)は、複数の「目を引くURLを有する同様のサイト」を自社資本系列下におくM&Aなどの対応を取っている模様だが、これにしても事業としての持続可能性(サステイナビリティ)を期待出来るレベルかと言うと、微妙であろう。

◆日本での類似事業の可能性

日本での新車見積サイト事業は実質それのみをベースとしているというよりも、周辺事業を取り込む形で成り立っていると言えるだろう。

新車見積もりに関してのみで言えば難しいかもしれないが、買取見積もり依頼などの領域では同様の情報卸売の動きもあるやに聞いている。

しかし、ユーザーが商品を実際に使用しているシーンを想像しながら、これを自宅に居ながら簡単に手に入れる(もしくは、手に入れるべく見積が取れる)ツールの実現が出来れば、「××車については、ここを通じたほうが情報も多いし、ワンストップで価格も一番安いものが得られる」という差別化が実現できるはずだ。

Web2.0の時代である。

こうしたユーザーインターフェースに特化したサービスを新たな手法を用いて確立するプレーヤーが現れた場合、初めて「ユーザーの生きた情報の卸売ビジネス」という新しいモデルの持続的確立もあり得るかもしれない。

《》

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