ホンダジェット 革新&小型高級

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ホンダジェット 革新&小型高級
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ホンダが航空機の研究開発に本格的に着手したのは86年。これまで「MH02」(93年)、「HondaJet」(03年)の2機種を作り、飛行させてきた。事あるたびにホンダは「純粋な技術開発目的」「事業化の予定なし」とアナウンスしてきたが、実は今日までの20年のあいだ、常に事業化を視野に入れたR&Dを行ってきたという。

「画期的な価値を提供できなければ、ホンダが航空機業界に参入する意味はないと言われていた」(ホンダ エアクラフト カンパニー社長・藤野道格氏)というのがトップの意向だったという。もちろん、革新性を重視する思想、いわゆる「ホンダイズム」もベースにあるだろうが、それ以前に、後発の新興メーカーの航空機は相当の特長がないとユーザーに買ってもらえないという障壁を乗り越えるためには、革新的なコンセプトが是が非でも必要だったのだ。革新性の追求こそ、事業化を視野に入れていたという証左にほかならない。

ホンダジェットの属するVLJ(超小型ジェット機)クラスで画期的なモデルとして名を挙げた例としては、ビジネスジェットの常識を覆す低価格を実現したエクリプス『500』がある。エクリプスアビエーション社はマイクロソフトの元取締役、レイバーン氏が設立したベンチャー企業だったが、150万ドルという破格のプライスが好感されて大量の受注を集め、コンセプトが斬新であれば新興企業でも航空機製造に名乗りを上げることができることを証明した。

ホンダジェットの革新性は価格ではなく、諸性能である。ホンダ独自の翼断面を持つ低抵抗の層流翼、胴体の空力向上などのリファインによって、燃費換算で3割もの効率向上を果たした。エンジンにGEホンダエアロシステムズの「HF118」を選択すれば、トータルで4割もの効率向上を果たすことができ、さらにコストのかかるエンジンの重整備も競合モデルの半分ですむという。

また居住性、静粛性もクラストップを狙う。試作機のシートアレンジを2+5のクラブシート仕様としていることからも、上級ユーザー狙いであることがわかる。ホンダジェットの狙いは、クルマに例えれば小型高級車なのだ。実は小型高級というコンセプトのモデルは意外に少なく、ニッチマーケットである。「他社のシェアを奪うのではなく、新しい市場を作っていきたい」(藤野氏)というプランは、決して荒唐無稽なものではない。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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