ホンダが10月18日に発売を開始した新型ビジネスジェット「ホンダジェット」は、セールス初日で約100機の受注を集めた。2005年、アメリカのEAAオシコシ航空ショーにホンダジェットが初めてお目見えしたとき、ビジネスジェットを物色に来ていたユーザーから喝采を浴びたが、早くもセールスでその人気が裏付けられた格好だ。
当初400万ドル以下とアナウンスされていた注目の売り出し価格は365万ドル(4億3800万円)。ホンダジェットが属するVLJ(ベリーライトジェット=超小型ビジネスジェット)のカテゴリーではもっとも高価な部類に属する。
その高価格がセールス上のネックになるのではと憂慮する声は、航空業界の専門家の間でも少なくなかった。ホンダエアクラフトカンパニー社長の藤野道格氏は8月に行われた会見で「コンジョイントスタディの手法を用いて市場を分析しました。エアタクシーなど新規需要への希望的観測を排除してもなお売れると判断した。ギャンブルではない」と語り、懸念を一蹴していた。
航空機メーカーにとってマーケットリサーチは、航空機そのものの開発に劣らず重要なノウハウ。小型高級・高価格という、航空機のプロでも売れるかどうか懐疑的だった機体について、“新参者”であるホンダが的確なマーケティングを見せたのは驚きに値する。
「藤野は常に航空機の事業化を視野に入れてきました。アメリカの航空業界とコネクションを持ち、友人も多い。ノウハウの蓄積もすでにかなりあるのでしょう」(ホンダ関係者)。ホンダの航空機ビジネスに対する本気度がうかがえる。