今回のオートショーでは、GM、ホンダの2社がはっきりと「今後長期的な視野から見て、最も重要となる技術はFCV」と言及したのが印象的だった。
ホンダではすでに完成度の高いFCV、『FCX』を有し、08年から一般へのリース販売を計画している。そのリース価格は、アメリカンホンダモータースR&D勤務のエンジニア、上野台氏によると「コスト度外視で月500ドル程度」が予定されている、という。
しかしFCV普及には水素ステーションというインフラが不可欠だ。実際AFVとして注目を集めるエタノール燃料にしても、全米で扱いを行うスタンドが圧倒的に不足しているのが現状。今回GMがFCVのシボレー『エキノックス』を発表し、ホンダより早く来年中に100台程度をリース販売する、しかもそのうち50台はカリフォルニア州内で、と明言したことは、ホンダにとっても大きな追い風となる。
シュワルツェネッガー知事も州内の水素ステーション設置に積極的な意見を披露し、他社もFCV技術に追随することで、一歩リードしているホンダにとっては有利な展開となりそうだ。
一方で、こうしたFCVへの注目度の高さは、10年前のEVブームを呼び起こす。カリフォルニア州がZEV法案を最初に打ち出した直後、各メーカーはゼロエミッションへの回答として次々にEVを発表した。今回と同様に、オートショー会場でEVの試乗会も行われた。
しかしその後、各社はほぼ一斉にEVから撤退。ブームは幻に終わった。そのため、業界内でも「FCVは各メーカーの『ゼロエミッションへの努力』というポーズだけに終わり、結局普及しない技術となるのでは」という声がある。
ただしEVとFCVの違いは、継続走行距離にある。当時のEVの一充電あたりの走行距離は100マイル(160km)程度で、実用にはほど遠い、と判断された。カリフォルニア州は各地に無料の充電ステーションを設けたりしたが、利用の頻度は少なかった。
しかしFCVの場合、水素ステーションさえ普及すればこうした問題は解決できる。シェル、モービルといった大手石油メーカーも現在のところ水素燃料の扱いに積極的な姿勢を見せている。
FCVはEVの二の舞となるのか、それともガソリンに変わる新世代エンジンとして主流となるのか。勝負は来年以降にかかっているようだ。