旧型『TTクーペ』を、カッコに惚れて買った人は、新型にはおそらくぜんぜん心を動かされないだろう。
“円”だけで造形したような先代モデルのシルエットだけを踏襲しながら、例の大口グリルや、尖ったプレスラインなどを取り込んでしまったので、デザインの純度は薄まった。
だが、それを補って余りあるのが、“見切り”の改善である。乗ると、フルフェイス・ヘルメットをかぶったように鬱屈した全周視界が、新型では大いに改善された。
足まわりの改良シロも大きく、旧型と比べると、サスペンションのストローク感が増し、足がよく動くようになったが、ハンドリング性能の点においても、視界の向上は効いている。ひとまわり大きくなったのに、運転していると、むしろコンパクトに感じられるからだ。
ダッシュボードが低くなり、開放的になったコクピットのおかげで、デートカーとしてもポイントアップしたと思う、見るなら旧型、乗るなら新型である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★☆
インテリア/居住性:★★★★☆
パワーソース:★★★★☆
フットワーク:★★★★☆
オススメ度:★★★★☆
下野康史|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部を経て、モータージャーナリストに転身。現在はクルマ雑誌を始め、週刊誌のコラムなど幅広く執筆活動を行っている。親しみやすい文体のなかに見える、鋭い着眼点や独特の語り口にファンは多い。