2 | 本気になったフェラーリ |
フェラーリのフラグシップカーというとデザインが注目されがちだが、歴代のフラグシップカーはハード面でも突出した性能を誇っていた。例えば、『250GT SWB』はツール・ド・フランス、その他のレースで活躍した実力派でもあった。
しかし、近年のフェラーリのフラグシップカーは、見栄えを求める金満家相手の道楽クルマ的なイメージが強くなってしまった。『550マラネロ』では、総アルミ製のスペースフレームを採用し大幅な車両重量軽減を図るなど、スポーツ性能向上に努めてはいるがインパクト不足の感は否めない。
このような、芳しくないイメージ払拭の切り札が599であり、フェラーリの原点を見据えた開発であることをうかがわせる。550マラネロと同様のアルミフレームで、550マラネロより全長が100mm強長くなったにもかかわらず、50kg程の軽量化を実現している。加えて、F1技術から生まれた車両制御の「F1 TRAC」や磁気粘性流体使用の「SMCサスペンション」など、フェラーリの最新鋭技術をも取り入れている。
しかし、なんと言っても目玉は『エンツォ・フェラーリ』のエンジンユニットと同じものを搭載したことだ。このエンジンは超高性能なだけではなく超高価であり、フェラーリの台所を支えるどころか、大出血サービスになりかねない決断といえる。
599のドキドキしないデザインも、卓越したハードに目が行き易いように仕組んだものとしたら心憎い戦略だ。商売上手のイタリア人ならやりかねない。