トヨタ自動車はカーナビゲーション用地図の差分配信技術「マップオンデマンド」を発表した。地図差分更新技術のポイントについて、同社の開発担当者に話を聞いた。高速道路・有料道路や幹線道路であれば開通してから7日で更新できるという。
トヨタ自動車 車両技術本部 第1電子技術部第13電子室
室長 浅岡泰造氏
主幹 杉本浩伸氏(以下敬称略)
——今回の技術発表のポイントは。
浅岡 エリアを限定して、変化したところのデータだけを差分更新するという点がキモになる。高速道路・有料道路や幹線道路であれば開通してから7日で更新できる。もちろん差分更新した道路を利用したナビゲーションも可能だ。
——差分更新の具体的な範囲は。
浅岡 自宅周辺の80km四方、目的地周辺の10km四方、およびその間をつなぐ道路周辺で新しくできた道を自動更新する。
杉本 全国の開通情報をすべて配信することもできるが、データ量が膨大になる。そこで必要なエリアだけをとることにした。たとえば、東京から大阪まで行くのに千葉県のデータはいらない。ただし主要幹線については、インターチェンジの情報も含めて全国の情報を送る。
——データの提供方法どのように。
浅岡 純正ナビの通信モジュール(DCM)もしくは携帯電話ならBluetoothでつないで通信する。また、地図をPCをダウンロードしてCD-Rからナビへというような更新も可能だ。
——差分更新で難しい点は。
杉本 カーナビナビゲーションに一番求められるのは経路案内。カーナビ地図の特徴は、道路がつながっているという情報を持っている点だが、リアルタイムの地図を送る際、部分部分のつながりを保証して、経路探索を行えるようにするのが難しい。必ずしも新しい道を使うことが最短・最速経路になるとは限らない。
——今回の新技術の採用で、どの程度のデータの圧縮が可能になったのか。
杉本 幹線道路や高速道路のデータはパターン化されているので、それを利用することでデータ量はかなり圧縮できる。
——マップオンデマンドが始まれば、年度版の地図ディスクを入れ替えたりすることはなくなる。
浅岡 その通り。
——いままで更新地図は有償だった。通信によって差分更新ができるようになったからといって無料で提供するわけにもいかないと思うが。
浅岡 有償か無償かはサービスを発表してからのお楽しみということで(笑)。現時点では、地図の差分情報を通信でカーナビに送る技術を確立した、というところまで。こういうテクノロジーとビジネスを組み合わせたときにお客様に提供できるメリットはどうなるか、という話は通信環境の変化などもふまえて今回以降も煮詰めていくべき課題。