30日発売のイストから新モデルで順次展開
トヨタ自動車が国内向け乗用車の安全装備で思い切った手を打つ。側面衝突の衝撃緩和につなげる前席用SRSサイドエアバッグとSRSカーテンシールドエアバッグを、30日発売の新型『イスト』を皮切りに、順次新モデルから標準装備にする。トヨタが重視する安全対策の一環だが、低迷が続く国内市場のテコ入れという狙いも見える。
サイドエアバッグとカーテンエアバッグの乗員保護効果は相当大きい。トヨタによると、米国道路交通安全保険協会(IIHS)が昨年10月に公表したデータでは、両エアバッグによって側面衝突時の死者が37%低減されているという。
問題はコスト。筆者にはカーテンエアバッグなどは高額装備品というイメージが強い。ところが、エアバッグメーカーと自動車メーカーが一体になった原価低減の成果は予想以上に進んでいた。
◆オプション価格は6万円台まで下がっていた
最近発売されたトヨタの『プレミオ』で見ると、両エアバッグのメーカーオプション価格は、セットで6万3000円。これだと、ユーザーが選択する際、例えばカーナビのランクを少し落とせば充分捻出できる価格ではないか。
23日の定例会見で渡辺捷昭社長は、標準装備について「今後、日本国内すべての乗用車に」と述べた。筆者にはことさら「日本国内」を強調したように聞こえた。渡辺社長は、低迷する国内には「市場創造型の魅力ある製品」の投入で対処する方針も示した。
カーテンエアバッグなどの標準装備は、まさにそのひとつとなる。何より、今ひとつ意気が上がらないトヨタディーラーの営業員を「トヨタの売りはこれだ」と、活気づかせることになろう。
◆トヨタの「決断」に追随するしかない
エアバッグの標準装備化は、1990年代初頭から徐々に進んできた。運転席エアバッグの標準化は、ホンダが1992年にファミリーセダンで実施したことが大きな転機となった。
さらに助手席エアバッグを含む標準化は日産自動車が96年に高級セダンに採用し、その後、短期間で業界に波及していった。今回も各社がトヨタの「決断」に追随していくことになろう。でなければ、最大の営業体制をもつトヨタには対抗できない。
これで市場のパイが大きくなるかどうかは別として、事故による死傷者の着実な低減にはつながる。社会的にも「魅力ある製品」となるのは間違いない。