【伊東大厚のトラフィック計量学】救命救急は時間が勝負…救急と事故 その1

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【伊東大厚のトラフィック計量学】救命救急は時間が勝負…救急と事故 その1
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9月9日は救急の日である。総務省の統計速報によれば、2006年中の救急車などの出場件数と患者の搬送人数は1963年以来初めて減少に転じた。交通事故が減ったことが主な減少要因に挙げられているが、安全なクルマ社会を実現する上で、救命率を上げることはとても大事なことだ。今回は、救命救急と交通事故について考えてみたい。

カーラー曲線

救命救急と死亡率の関係は、「カーラーの救命曲線」が1981年と古いデータながら現在もよく引用されている。カーラー曲線とは、交通事故などの発生後、治療されずにいた経過時間と死亡率の関係を示したものだ(図1)。

2人に1人が助かる死亡率50%のラインで、心臓停止は3分、呼吸停止で10分、多量出血の場合で30分の猶予しかない。出血多量の患者を1時間治療せずにいると、ほとんど生存の可能性はゼロということになる。重篤患者の救命は、まさに一刻を争うものなのだ。

◆効果が出てきた救命救急対策

119番通報後、救急車の到着まで平均6分半かかる。救命救急は、応急手当や処置が重要なのは言うまでもない。市民向けの応急手当講習、適切な応急処置ができる救急隊員や救急救命士の養成、最近注目されているドクターヘリの配備は、いずれも応急治療を開始するまでの時間短縮を主眼においたものだ。

応急手当や処置の効果は確実に出ている(図2)。心肺停止状態で搬送された人のうち、家族など市民の応急手当が実施されていたケースは、05年では約1/3に達している。また救命率も上昇している。市民や救急救命士などによる応急手当や処置によるものだろう。

◆交通事故は通報までのタイムラグ短縮が重要

交通事故の場合、事故発生から通報までのタイムラグも無視できない。当事者は事故のショック等ですぐには通報できない状態に陥り、バイスタンダー(bystander:現場に居合わせた人)による通報も多いことからタイムラグが発生しやすい。

発生から通報までのタイムラグは、統計が取りにくくデータは少ないが、9分程度のようだ。救急車到着までの6分半を加えると、発生から到着まで15分かかっていることになる(図3)。通報までのタイムラグは、携帯電話が普及した今日では小さいと思われがちだが、通報後、救急車が到着するより長い時間が費やされているかもしれないのだ。

仮に救急救命士や医師が事故現場に同行できたとしても、救急車到着までの時間は専門的な処置や治療は難しい。通報までのタイムラグが短縮できれば救命率はアップする。カーナビやGPS携帯を活用するなど、緊急通報の仕組みを整備・普及させることがタイムラグ短縮につながると思う。

《伊東大厚》

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