【伊東大厚のトラフィック計量学】道路行政の目標達成度評価とアウトカム指標

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行政評価をご存知ですか?

「行政評価」と言われてもあまり詳しく知らない…、という方が多いと思う。では「成果主義」と聞くと、お馴染みのコトバではないだろうか。行政評価とは、政策・施策を成果や達成度で判定することだ。今回は、行政評価の観点から道路整備について解説してみたい。

ところで成果や達成度とは、どういうことだろうか。例えば道路を何km整備した、というのは成果ではない。事業費や整備量、対策箇所数などアウトプットは、成果(アウトカム)とは区別される。交通事故、渋滞、環境負荷など、道路交通の課題の解決度が成果となる。

成果を測るには、指標がいる。企業の業績管理風に言えばKPI(Key Performance Indicator)のようなものだが、道路行政では事故件数、渋滞損失、CO2などが指標となる。これらアウトカム指標の目標と実績を比較して毎年達成度を評価している。

◆道路行政の目標達成度評価

道路行政では、比較的早い時期に達成度評価を採用している。現行計画では02年度を基準に07年度を目標とする5年間の計画を定めている。評価結果は毎年公表されており、「達成度報告書・業績計画書」が国土交通省道路局のWebサイトで参照できる(図1)。

表1に現行計画の主な道路交通施策の指標、それぞれの目標と実績を示した。達成度は06年度実績と07年度目標値を比較したので、達成度が70 - 80以上なら進捗は良好と見てよいだろう。

達成度は概ね順調のようだ。中には道路渋滞による損失時間(表1マル2)、路上工事時間(同マル3)のように、既に07年度目標値より改善した項目もあるが、例えば渋滞損失は30億時間、金額換算で10兆円規模であるなど、まだ改善の余地は残されている。

◆アウトカム指標から道路投資を考える

07年度は現行計画の最終年度であり、道路特定財源の暫定税率も年度末で切れる。次期計画については昨年末、政府・与党は「道路の中期計画」の事業費を65兆から59兆円に圧縮した上で10年間の暫定税率延長を決めたが、延長を巡り国会が揉めているのはご存知のとおりだ。

つまるところ、「真に必要な道路」をどう定義するかの問題なのだろうが、アウトカム指標は道路投資の必要性や税率を考える際の入り口になると思う。税率は事業費の多寡で決まり、事業費はアウトカム指標をどこまで改善するかによって上下するためだ。

満足な水準にない指標もある一方で、すべての箇所で対策していてもきりがない。全国、あるいは地域単位で優先度の高い指標を設定し、いつまでにどの水準にするかを決めることが第一歩だと思う。

《伊東大厚》

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