【池原照雄の単眼複眼】非常時体制のトヨタ、緊急VA・VEも

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コスト低減に既販モデルも総ざらい

原材料費の高騰や為替変動によって今期(09年3月期)純利益が3割近く減少する予想のトヨタ自動車が、非常時体制ともいえるコスト縮減策に着手した。原価改善の一環として販売中の車種を対象に、緊急のVA(価値分析)・VE(価値工学)を開始したほか、4月からは交際費などの大幅削減にも取り組んでいる。

VA・VEは部品ごとの素材や製造工法、形状などをいくつかのパターンで比較検討してコストや品質の改善につなげる手法。トヨタは2005年から「VI(バリュー・イノベーション)」という原価改善活動にも取り組んでいる。

こちらは、設計段階からコンポーネンツ単位で部品点数を削減するなどのコスト低減を推進するもので、新モデルや全面改良の車両が対象となる。今回のVA・VEは既販車種にも原価改善のメスを入れる狙いで始めた。

◆原価改善ゼロの「異常な事態」

ほぼ1年をかけて推進し、順次、設計変更をして改善策を講じる。こうした緊急の取り組みは、バブル崩壊後の1993年以来、15年ぶりとなる。

トヨタは今世紀以降、「CCC21」や「VI」といった原価改善活動で、年間3000億円レベルのコスト低減をコンスタントに実現してきた。しかし、原材料費の大幅な上昇が顕在化してきた06年度からは改善効果が値上がりに食われ、07年度のコスト低減は1200億円にとどまった。

今年度については3000億円強のコスト低減を見込むものの、原材料費の上昇で相殺されると想定。原価改善は「ゼロ」と「かつてない異常な事態」(木下光男副社長)になっている。

一方、交際費や会議費などの経費についても今年度のスタート時から縮減に取り組んでいる。ある間接部門では交際費を07年度比で35%削減する予算になったという。

◆体質見直しの絶好のチャンス

渡辺捷昭社長は8日の決算発表の席上、「(今世紀初めから)ずっと右肩上がりで来た。そうした体質を徹底して見直す絶好のチャンス」と、強調した。トヨタは今世紀初頭から毎年50万 - 60万台のペースで生産・販売を拡大し、昨年には世界生産でトップとなった。

この間の成長は、いわば「コストより時間軸優先」(木下副社長)だった。その分、コストの追求が緩んだところも多いはずであり、緊急のVA・VEはタイミングとしても絶妙だ。

過去最高の業績が続き、世界一も見えるなか、渡辺社長は昨年来「千丈の堤もアリの一穴から」などを引き合いに出し、社内の引き締めに必死だった。それも、順調な業績拡大という事実の前では、今ひとつ届きにくかったような印象だ。大幅減益という現実が「渡辺語録」に、より重みを加えている。

《池原照雄》

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