【伊東大厚のトラフィック計量学】シートベルト着用効果の分析

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【伊東大厚のトラフィック計量学】シートベルト着用効果の分析
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自動車乗車中の死者数とシートベルト

近年、交通事故は発生件数、死者数、負傷者数すべてが減少しつつあり、特に死亡・重傷者数の減少傾向が顕著となっている。減少は様々な対策の成果と言えるが、今回はシートベルトに注目し着用率向上による死者数低減効果を分析してみたい。

シートベルトは自動車の乗員の被害軽減をもたらす。自動車乗車中の死者数は、97年には死傷者総数の44%、4251人を占めていたが、07年は35%、2013人となり構成率、実数ともに減少している(図1)。

他方、自動車乗車中死傷者のシートベルト着用率は、97年からの10年間で77%から89%と12ポイントアップし(図2)、死者に限ってみても着用率は31%から47%にアップしていることから、着用率向上の効果が伺える(図3)。

◆シートベルトと致死率

また乗員のシートベルト着用状況と被害状況から、着用有無による致死率の違いがわかる。死傷者全体に対する死者数を致死率とすると、ベルト着用者の致死率は0.2%前後と非着用者の10分の1であり、明確な違いがある(図4)。

またベルト着用・非着用の双方とも、致死率が低下しつつある点にも注目したい。致死率の低下は、シートベルト以外にも乗員への衝撃を緩和している要因があることを意味する。要因には衝突安全ボディやABSなどクルマの安全性向上、危険な運転が減ったこと、事故多発地点など道路の改良、等が考えられる。

◆効果の推定

シートベルト着用率向上による自動車乗車中の死者数低減効果を大まかに推定してみよう。自動車乗車中の死者数は、ベルト着用・非着用ごとの死傷者と致死率の積で表現でき、その効果は、シートベルト着用率の向上と致死率の低下に分解できる。

シートベルト着用率、致死率とも97年から変化なしの場合、着用率のみ向上した場合の死者数を推定し実績値と比較すると、07年ではシートベルト着用率向上効果が1470人、致死率低下などその他の効果が1260人となり、ほぼ5:5の寄与となる(図5)。

6月、後席のシートベルト規制が強化された。シートベルトは、着用率の低い後席で200人死者が出ているなど、まだ死者数低減の余地がある。チャイルドシートも含め、「全乗員の保護」を一層浸透させる必要がある。

《伊東大厚》

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