日本事業の復活が…
ミニバンの先駆メーカーとしての意地とノウハウが注入されたホンダの『フリード』が、好調な出足となった。発売後1か月の受注は目標対比で、2001年に投入した初代『フィット』以来の高い数字だ。
軽自動車の不振など、国内販売の不本意な実績が続いていたホンダだが、フィットとの両輪で、ようやく巻き返しへの足場を固めた。フリードにはロングセラーの実力があると見ており、来年初めに投入する新型ハイブリッド専用車が戦列に加われば日本事業の「復活」が実現しよう。
「販売会社さんなどの事前の反響は、(初代)フィットに次ぐ手応えだね」。5月末の発表会場で、福井威夫社長は自信たっぷりだった。国内営業部門の幹部も、フリードは系列ディーラー向け内見の段階から、反応がすごく良かったと口を揃えていた。
とくに、軽自動車販売など小さいクルマに強い旧「プリモ」系列が「やる気」だったという。ディーラーからは、フリードの前身モデルだった『モビリオ』の3列目シートを「大人も普通に座れるように」との強い要望が数年前から寄せられおり、新モデルの開発につながった。
◆フィットの「6倍」に次ぐ「5倍」の受注
発売1か月のフリードの受注は約2万台。月間販売計画の5倍に達した。01年6月に発売した初代フィットは月8000台の計画に対し、4万8000台と6倍だった。フィットには届かないものの、フリードはホンダの期待どおりの初期受注となった。
2万台の受注のうち52%のユーザーが「インターナビ・プレミアムクラブ」に対応したHDDナビをメーカーオプションとして注文しており、商売の中身(付加価値)も決して悪くない。
◆就任6年目で足元の霧が晴れる
今年1 - 6月の乗用車8社の国内販売実績は、軒並み横ばいないしマイナスとなったが、ホンダだけは前年比3.1%増と、水面上に顔を出した。昨年10月に投入したフィットが登録車でベストセラーを続けていることが大きい。
しかし、総台数では軽を主体とするスズキ、ダイハツの後塵を拝して5位に甘んじている。連結売上高ではトヨタ自動車に次ぐ2番手メーカーには、不釣合いな実績だ。
激戦の国内を勝ち抜いてこそ、開発から生産、販売に至るまでの士気も上がる。フリードは市場創造型の商品であり、久々に「ホンダらしさ」を発揮しそうだ。就任以来、ほぼ一貫して国内販売での後退を余儀なくされた福井社長にとっても、やっとの思いで足元の霧が晴れてきた。