【トヨタ iQ プロトタイプ】トヨタ流 究極のMM思想

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【トヨタ iQ プロトタイプ】トヨタ流 究極のMM思想
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トヨタがこの秋おくりだす新コンパクトカー『iQ』。全長3m未満という軽自動車よりずっと短いボディで乗車定員を4名を実現、さらにユーロNCAPなど厳しい衝突安全基準もクリアするという革新的なモデルだ。

全長3m未満のボディで4名分のスペースを確保するのは容易ではない。

iQに4人が乗るときは、ちょっとした“シートアレンジ”が必要。助手席を前に出して後席のレッグスペースを空けてやることで、リアにも人が乗れるようになる。運転席側はドライビングポジションの関係もあって、極端にシートを前出しすることができないため、子供や小柄な大人が乗るのがせいぜい。

などと書くと、いかにも狭苦しい車内に人間がギュウギュウ詰めになっているような印象を受けるかもしれない。筆者もそういう先入観を持っていたが、実際には案外ゆとりがある。

乗用車のデザインは、まず人が乗るのに必要な空間を設定するところから始まるのだが、全長3m未満というコンパクトサイズでは、キャビンを設定した後には機械を入れるスペースはほんのちょっとしか残らない。

「普通にデザインしていては、このサイズでは2シーターにしかなりません。iQを4人乗りにするためには、さまざまな省スペースの工夫が必要でした」

チーフエンジニアの中嶋裕樹氏は続けて語る。

「左ハンドル、右ハンドル両方に対応し、さらに助手席を前に出したときのレッグスペースも稼ぐため、車内からタイヤハウスの出っ張りをほぼ完全に追い出しました。横置きエンジンの場合、デファレンシャルギアやドライブシャフトは普通、エンジンよりやや後方に配置するんですが、iQの場合は反対に前方に出しました。」

「いわばフロントミッドシップのような配置です。エンジンルームのスペースを有効に使うとともに、前輪をボディの隅ぎりぎりに追い出すことができました」

こうして確保した室内の前後長を極限まで有効利用するための、インテリア側の工夫も多彩だ。

「たとえばブロアユニット(送風システム)。これまでの自動車工学では、送風ポンプは低い位置に配置するべきとされてきました。そのほうが効率がいいとされてきたからです」

「しかし、iQでは車内のスペースを少しも無駄にしたくない。ということで、試しにエアコンユニットの上部にブロアを配置してみたんです。もちろん既存のユニットをそのまま使うだけでは、セオリー通り効率が悪くなってしまうのですが、ポンプの中の空気の流れを解析していろいろと試しているうちに、従来よりかえって効率を高めることができることが判明したのです」

ブロアユニットの配置の変更により、iQのキャビン前方まわりのスペース効率は大きく向上し、室内の前後長をより有効活用できるようになったという。また、シートバックもパッドを後ろからワイヤーで支える新構造を採用し、体圧分散や衝突時の衝撃軽減などクルマに必要なスペックを維持しながら限界まで薄型化している。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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