ホンダが世界初の量産燃料電池車としてリース販売を開始した『FCXクラリティ』に対するユーザーの期待は大きい。アメリカではリース料が月600ドルと格安であることもあって、ウェブサイトでリース希望者を募ったところ、たちどころに5万人以上の応募があった。
水素ステーションがあるところでしか使えないという不便さなど何のそのという人気沸騰ぶりである。価格さえリーズナブルになれば、燃料電池車の需要は飛躍的に高まることが図らずも証明された格好だ。
「コスト低減は水素供給インフラの整備と並び、燃料電池車を普及させるうえで乗り越えなければならない高いハードルのひとつです」
開発責任者の藤本幸人氏は、普及の最大のカギとなるコストが、依然として燃料電池車のネックとなっていると語る。
燃料電池と言えば、かつては白金使用量が多く、重要部品のセパレーターもカーボン製と、とても量産できるシロモノではなかった。ホンダは白金の使用量を普通のクルマの触媒よりはやや多いというレベルにまで削減し、セパレーターも5年前にステンレス製のものを実用化した。コストダウンのレイヤーは、素材から量産技術へと一歩前進しているのだ。
「そうは言っても、燃料電池車をたくさん作るのは簡単ではありません。例えば重要部品のセパレーターひとつとっても、もし燃料電池車を1万台作るとすれば、単純計算で月間500万枚製造しなければなりません。今の段階では、どうやったらそんなに安定して大量生産できるかということもよくわからない」
「3年で200台生産というのは少ないように見えるかもしれませんが、燃料電池車の量産をどうすればいいかという課題を洗い出すための重要なファーストステップなんです。ここをクリアして、はじめて1桁、2桁多い生産台数が見えてくるでしょう」