アウディ『80』から数えて8代目になる『A4』は、モデルチェンジを機にボディサイズを兄貴分の『A6』並みに拡大した。押し出しが強くなり、風格も増したが、日常の取り回し性は今一歩だ。
その反面、走りの実力は大きくレベルアップしている。アウトバーン育ちだけに高速直進安定性は文句なしだ。スピードによってギア比と操舵力が変化するダイナミックステアリングに可変ショックアブソーバーを組み合わせたアウディドライブセレクトは、高いスタビリティ能力を秘め、乗り心地の洗練度も高い。優れた空力性能のボディは、ワゴンのアバントであっても風切り音が少ないし、ロードノイズも上手に封じ込まれている。ボディは剛性感たっぷりだ。
3.2リットルの直噴V型6気筒DOHCエンジンは全域に渡って滑らかで、レスポンスも鋭い。実用域のトルクも厚みがある。1.8リットルの直噴4気筒ターボも力強いパワーフィーリングだ。低回転から豊かなトルクを発生し、加速も冴えている。アバントが加わってからは一段とドライバビリティが向上し、扱いやすくなった。
キャビンは満足できる広さだ。リアシートに座っても膝元と頭上には十分な余裕がある。トランクルームは並みの容量だが、荷物は積みやすい。ワゴンのアバントはトノカバーにも工夫を凝らした。輸入車ビギナーからクルマを知り尽くしたベテランまで、幅広い層のユーザーにすすめられる懐の深いファミリーカーだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。08-09日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。