先代の『C5』の乗り心地は、『C6』が登場してもなお、もっともシトロエンらしいシトロエンであった、と思う。運転していて酔いそうになったもの。
C6は大幅にそのふわふわ度合いを制限して、もはやコーナリングでは不自然なくらい傾かない車になっていた。そしてC5である。そのC6が古臭く感じられるほど
自然になった。自然でスポーティ。峠道での楽しさがC6との大きな違いだ。それでもハイドロニューマチックの動きは健在。ハイドロのスフィア以外、足元はプジョー『407』とほぼ同じというのに、まったく違う味付けになるのだから車は不思議だ。
エンジンは3.0リットルの方でも控えめ。ATは2種類。2.0リットル版は昔ながらの味のある学習機能付き4AT。3.0リットルの方は新世代6速AT。趣は違うが、どちらも新しいとはいえない。やはりこの車は足回りがすべてのような気がする。
分厚いシートに腰掛けるとずいぶん立派なクルマに乗っている錯覚を覚える。感覚的には『Sクラス』メルセデスのそれだ。走り出すと「ふわりふわり」とした感覚は確実にあり、またしても酔いそうになった。オーナーがクルマを選ぶのではなくて、車がオーナーを選ぶような、そんな車だ
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
松任谷正隆|音楽プロデューサー、JAJ会員
1951年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。20歳頃からプロとしてスタジオプレイヤー活動を開始し、73年細野晴臣、鈴木茂らとグループ「キャラメル・ママ」を結成。解散後、「ティン・パン・アレー」を経て数多くのセッションに参加。松任谷由実をはじめ、松田聖子、吉田拓郎、ゆず、など多くのアーティストの編曲、プロデュースを手がけている。1986年より「カーグラフィックTV」のキャスターを務め、音楽とともにモータージャーナリストの道も歩み始める。著書に『職権乱用』『マンタの天ぷら』『僕の散財日記』など。