【COTY 選考コメント】日常的に取り回しのよいクルマは、本質的に楽しい…神尾寿

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【COTY 選考コメント】日常的に取り回しのよいクルマは、本質的に楽しい…神尾寿
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●トヨタ『iQ』:10点

これからの時代、クルマはどのように人や街と共生するのか。このテーマに対して、トヨタのiQは積極的な提案と、技術的な挑戦をしており、それらのコンセプトすべてを総合評価して10点を投じました。

 iQは確かに“爆発的に売れる”ような商品訴求力をすぐには期待できず、そのコンセプトの浸透には時間がかかるかもしれません。しかし、iQのもたらした 高効率な超小型パッケージング技術は、都市化が進む現代の自動車交通において重要なもの。また、iQを支える豊富な先進安全装備、環境性能の高さなども、 これからの時代において大切なものだと考えます。

また、1台のクルマとしても、iQのキビキビと小回りが利く走りは、乗っていてとても楽しい。iQの登場によって、多くの日本車メーカーが「日常的に取り回しのよいクルマは、本質的に楽しい」ことを再確認してくれればと思います。

街と共生し、街を楽しむ可能性を秘めたクルマとして、私はiQを今年のイヤー・カーとして推します。

iQ以外のクルマについては、私は以下のように評価しました。評点と選考理由は次の通りです。

●ホンダ『フリード』:5点

日本で実際に売れる7シーターセグメントにおいて、優れたパッケージ技術で小型化を実現。実質的なダウンサイジングを行ったことは、トヨタのiQと同じく価値のある取り組みと評価しました。

残念だったのは、フリードが横滑り防止装置「VSA」を標準装備しておらず、渋滞回避・燃費向上に多大な効果のある最新の「インターナビ・ルート」に非対 応であること。このふたつのうち、せめてどちらかが搭載されていれば、最高得点もしくは特別賞を投じることができたでしょう。

●アウディ『A4』:4点

 特に私が評価したのは、下位グレードの「1.8TFSI」。ターボ技術をエコ方面で使い、CVTも積極的に採用。排気量を上げずにプレミアムDセグメントにふさわしい走りを実現したところに、アウ ディの誠実さを感じました。また、新開発の「アウディドライブセレクト」はソフトウェア制御で、運転感覚を変えられるところが楽しい。プレミアムカーも低 燃費という流れを作ったことを評価し、4点を投じました。

●シトロエン『C5』:4点

すべてがフラット化するグローバル時代にお いて、独自の個性・乗り味を堅固に守り、しかもそれをきちんと21世紀の技術で再構築している点を評価しました。乗り心地、デザインともに輸入車の定番で あるドイツ車とは一線を画し、日本の自動車市場の多様性において貢献するクルマだと判断します。

一方で、残念だったのがパワートレイン。環境と経済性の時代を鑑みて、低燃費性能にも競争力があれば、もっと高い評点が考えられたのですが。

●ダイハツ『タント』:2点

“スモールシフト”の風潮の中で、日本の軽自動車技術にも注目が集まっていますが、その中でタントは軽自動車ながら「革新的なスペースユーティリティ」を 実現しています。その点を評価し、2点を投じました。iQやフリードと同じくクルマのダウンサイジングに可能性を見せてくれるクルマであり、今後はさらに 安定感のあるハンドリングと、横滑り防止装置の標準装備やエアバッグの増加など、安全性のさらなる向上を図ってほしいと思います。

●特別賞 BEST VALUE:日産『GT-R』

世界の有名スポーツカーと競合することのできるハイ・パフォーマンスを搭載しながら、非常に高い価格競争力を持つ。さらに新開発のエンジンとトランスミッ ションは、スポーツ走行ですばらしい走りを実現するだけでなく、日常的な利用では十分な実用性を提供しています。非常に優れたコストパフォーマンスと、走 ることに対する高い価値の両立。これらの点から、「BEST VALUE」に日産GT-Rを推薦しました。

●特別賞 MOST ADVANCED TECHNOLOGY:ホンダ『オデッセイ』

オデッセイはVSAを標準装備するほか、標準グレードに装備する「E-COM」のソフトウェア制御による実用燃費向上システムの出来映えがとてもすばらし い。さらに新開発の「インターナビ」は、情報サービスで低燃費支援と、渋滞回避による快適性向上を実現する画期的なものです。他にも、「マルチビューカメ ラシステム」や「ACC」、「LKAS」など運転支援システムがオプションとして用意されており、先進装備の実用化と普及において大きく貢献していると考 えました。これらの点から、オデッセイが「MOST ADVANCED TECHNOLOGY」に最適と判断しました。

●特別賞 MOST FUN:スバル『エクシーガ』

7シーターとして後発ながら、乗用車ライクでスバルらしい“ハンドルを切るだけで楽しい”運転感覚を、すべてのグレードで実現。さらにセカンドシート およびサードシートの実用性と静粛性、快適性がとても高い。乗る人全員に「クルマ移動だから楽しい」ことを提供しようというコンセプトは、モビリティにお ける電車や飛行機など公共交通との競争において、クルマのよさを積極的に提案するもの。この点を評価し、エクシーガをMOST FUNとして選びました。

神尾寿│通信・ITSジャーナリスト
学生時代にIT専門誌で契約ライターをし、その後、大手携帯電話会社の新ビジネス企画担当などを経て、1999年にジャーナリストとして独立。ウェブ媒体やビジネス誌、新聞各紙を中心に執筆する。通信およびインターネット、ITS、次世代交通システムなどの分野で、技術および市場動向の取材、ユーザーニーズの分析を行っている。21世紀の交通社会に向けたクルマの進化、安全および環境分野での先進技術/サービスの開発・普及と、利用促進に向けた取り組みを重視している。2008年からCOTY選考委員。

《神尾寿》

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