【伊東大厚のトラフィック計量学】9月の交通事故統計から

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【伊東大厚のトラフィック計量学】9月の交通事故統計から
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◆目標の前倒し達成が確実に

警察庁が先月公表した交通事故統計によれば、9月末段階の交通事故死者数は3607人(前年比−513人、12.5%減)となり、交通事故発生件数も56万件(8.6%減)、負傷者数69万人(9.4%減)と減少が続いている。

昨年1年間、交通事故死者数は5744人、負傷者数は103万人余であった。今後、9月末段階の減少率のままで推移すれば、今年の通期見通しは、交通事故死者数は約5千人、負傷者数は94万人弱まで減少する見込みだ。(表1)

政府は03年、「世界一安全な道路交通」を目指すとして2010年までに交通事故死者数5500人以下、負傷者数100万人以下という目標を掲げたが、今年中の達成は確実となった。また、死者数が5千人を下回ることになれば、2012年の目標も4年前倒しで達成することになる。


◆死者は少ないが事故の多い日本

しかし国際的にみて、日本の道路交通は世界一安全とは言い切れない。人口あたりの交通事故死者数と発生件数をみると、たしかに死者数では世界トップクラスだが、事故件数は何と「最下位」であるためだ(図1)。

なぜ日本は交通事故が多いのだろう。図1は主に欧米諸国との比較なので、原因は、欧米より道路上を走るクルマの密度が高いためなのかもしれない。

クルマの路上密度を下げるには、保有台数や走行量を減らすか、道路の容量を増やせばよい。しかし、これからの日本は、クルマが増えることもないが大きく減るわけでもなく、また物理的な道路容量も増えることはないだろう。


◆チャレンジングな目標を掲げよう

交通安全対策の成果指標は、死者数、負傷者数とも今年中にも03年策定の現行目標水準に達する。しかし、日本を真の意味で「世界一安全な道路交通」とするには、交通事故をさらに半分の件数に減らさなければならない。どのような事故予防策が有効だろうか。

クルマの路上密度が高い場合、出会い頭や右左折の事故にはカーブミラーや右折レーンなどインフラの改良、追突には車間距離保持やプリクラッシュ・セーフティなどクルマの安全機能が有効だ。また、ドライバーの死角による事故やうっかりミスを防ぐには、路車間通信を使った注意喚起に期待がかかる。

交通事故の半減は、かなり高いハードルだ。しかし、まず日本全体の目標を決めないことには何も始まらない。チャレンジングな目標は、究極の目標である「交通事故のない社会」を実現する第一歩になる。

《伊東大厚》

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