【池原照雄の単眼複眼】米国市場、底打ち局面の「状況証拠」

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【池原照雄の単眼複眼】米国市場、底打ち局面の「状況証拠」
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1986年→91年にも大幅な需要減

世界に波及した金融危機の震源であり、かつ最大の新車需要地である米国の2008年市場は、記録ずくめの低調となった。

「米国が回復しないと世界の自動車産業は元気にならない」(福井威夫ホンダ社長)と、業界の最大の関心事は、米国市場がいつ底打ちするかだ。過去の経験則が通用しない事態となっているのを承知のうえで、過去のトレンドを見ながら探ってみた。

08年の米市場は前年比18%減の1324万台となった(米調査会社オートデータによる暫定値)。07年から一気に290万台、ピークだった2000年(1735万台)からは410万台の落ち込みだ。

290万台という1年での落ち込み台数は過去最大だが、ピークからの落ち込み幅は過去にも似たケースがある。前回の需要ピークは1986年の1605万台であり、その後の谷は91年の1230万台だった。このときは5年で375万台の需要が減少した。

◆保有台数と比べても「異常な数字」

注目すべきはピークからの落ち込み幅が、ほぼ一致していることだ。今回はピークから08年までで24%落ち込んだ。同様に計算すると前回は23%の落ち込みだった。

もうひとつ、保有台数と市場との関係を見てみよう。トヨタ自動車の年末定例会見で、豊田章男副社長が興味深い指摘をしていた。米国の保有台数は現在ざっと2億5000万台(商用車含む)に達している。

豊田副社長は、11月に年率の需要が1000万台規模(1018万台)となったことを引き合いに出して、「このペースだと、クルマは25年に1度買い換えられるという異常な数字」と指摘した。

保有台数を、その時々の市場規模で割った数値を仮に「需要比使用年数」としよう。2億5000万台という現在の保有を、08年の市場規模である1324万台で割ると、その数値は19年となる。つまり、08年の需要に当てはめた平均使用年数は19年ということになる。

◆不透明要素は多いが…

日本の乗用車平均使用年数(寿命)は12年に近づいているが、それをはるかに上回るまさに異常な数値だ。米国の前回の谷であった91年の「需要比使用年数」は15.5年であり、これに比べても長い数字となっている。

もうひとつのトレンドは月次需要の年率換算。昨年10月に1025万台、11月には1018万台と落ち込んだが、12月は1032万台だった。「底這い」状態に変わりはないが、11月よりは、わずかに改善した。

米国市場を占ううえでは、今後、不透明な要素が余りにも多い。金融機関への公的資金注入によるローン供与の回復が順調に進むか。また、米ビッグスリーの破たんは回避されるか—などである。ただ、過去のトレンドから見れば、すでに底打ち局面という「状況証拠」は、少なくないのである。

《池原照雄》

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