復活アバルトの真打ち登場といった感がある。今後、このビジネスモデルが成功すれば、過去の栄光のように、小さくてかわいくて格好よくて過激なオリジナルスポーツカー登場もありえるかもしれぬが、しばらくはコイツがアバルトの主役だろう。
それにしても、運転していて単純に素直に笑みがこぼれてしまう、というか、体が熱くなるようなクルマを作ることにかけては、奴らは本当に上手い。アバルト復活のかけ声の元、フィアットグループ中に散らばっていた“熱いクルマ好き”が再結集したというのも頷ける。
ちなみに、グループ傘下の各ブランドの走りを仕上げているのは、それぞれに特化した部隊だという(フィアットはフィアット、アルファはアルファ、アバルトはアバルト、の専門チームが仕上げているということ)。だから、ベースが同じでも走りのテイストはまるで違うのだ。
見栄えが少々子供っぽい。昔を知るマニアにはちょっと手を出しづらいか。アバルト熱狂世代ではない私でも、毎日乗るには気恥ずかしい。逆にいえば、このパフォーマンスながらノーマルとほとんど同じ雰囲気で、違うのはエンブレム+αくらい、なんていう仕様があれば飛びつくかも。
この際細かいことを抜きにして、という感覚は、ベースとなったフィアット『500』にもあったけれど、500アバルトは輪をかけてそうだった。レザーシートが厚ぼったくてしっくりこないことなど忘れよう。格好に似合わぬ骨太なサウンドに誘われるがままアクセルを踏み出したら最後、意地でもハンドルとペダルから離れないぞという気になる。
過激なFF車だが、ドライビングテクニックなど小難しいことを忘れて、とにかく走り回っているだけで楽しい。クルマからなかなか降りたくないという気分になったのは、最近ないことだった。
■5つ星評価
パッケージ:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
西川淳|自動車ライター
昭和40年生まれ、奈良県出身。スーパーカーをこよなく愛し、イタリア車に大いにはまりながらも、高性能ドイツ車を尊敬してやまず、新旧日本車もカワイクて仕方がない。浪花節クルマおたく。