【中国 次世代トヨタ】e-CRBの徹底はディーラー隣接の教育センターから

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【中国 次世代トヨタ】e-CRBの徹底はディーラー隣接の教育センターから
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広汽トヨタ(GTMC)のディーラーオペレーション・顧客管理システム『e-CRB』(evolutionally Customer Relationship Building)は、高度に統合されたICTシステムではあるが、これを円滑に運用し、来店・販売やアフターサポートに結びつけるのはあくまでも“人” の仕事である。どんなに完成された仕組みでも、それを運用する人材の技量と熱意が伴っていなければ、成功はおぼつかない。広汽トヨタでは、e-CRBの開発に負けないほどに人材育成に力が注がれている。

◆「システムを入れただけでは、すぐに崩れる」

広汽トヨタでは、販売権を取得する企業に対してe-CRBの導入を義務づけている。一方でe-CRBをディーラー向けに指導する30人規模の専任スタッフを揃え、新規販売店向けの指導から既存導入店への巡回、効果測定に至るまでのあらゆるタームで計画的な教育体系を組んでいる。

広汽トヨタ総経理助理 友山茂樹氏はe-CRBの開発と運用はICT技術だけではなく、人の汗があってのことだと言う。

「専任スタッフは171店舗に定着させるために日々研修・指導を実践しています。施設や人権費など、もちろんそれなりの費用がかかりますが、基本的には得るところが大きいという考えでやってます。逆にシステムを入れただけでは、すぐに崩れる。これだけの労力をかけて、全販売店で動かないと、e-CRBのようなオペレーションは決して実を結ぶことはないと考えます」。

◆e-CRBコンセプトの理解から

広汽トヨタ第一店。広州市にある広汽トヨタの販売権を持つディーラーのひとつだ。ここはモデル店としての扱いを受け、販売店に隣接して広汽トヨタの研修施設も併設されている。e-CRB部シニアマネージャーの森光宏氏は、「e-CRBの導入にあたり、販売店の董事長、総経理、全マネージャークラスに研修施設に来ていただいてe-CRBのコンセプト、具体的な取り組みについて各役割に応じた教育を提供しています。実際のディーラーに隣接させていただいて、見学を含めたより具体的な指導ができている」と説明する。

導入後の店舗については、定着度合いを図るための巡回現状調査が広汽トヨタスタッフにより随時おこなわれる。「チェックシートを用意し、標準通りにできているかどうかをABCの3段階評価で確認しています。この調査結果に基づいて、e-CRBの定着度を整理します。指導通りに運用されていない項目があれば、広汽トヨタのスタッフが販売店に訪問し、店舗内での再教育を進めます」(森光氏)。

チェック項目は「大きな声で気持ちのいい挨拶をできているか?」といった接客の基本から「見込み客をもれなくタイムリーにフォローしているか?」とi-CROPの活用実態までに細分化され、BやCなどのネガティブな評価にはその理由まで詳細に記載される。

販売店を訪問して指導するするからには、広汽トヨタのスタッフはe-CRBを活用したCR活動全般に精通していなければならない。そこで指導員研修として販売店の一連の業務や作業を実践形式で習得させるレッスンも実施しているという。

「来店から商談、受注、納車、購入、サービスの入庫、誘致、予約、受付、そしてサービスといった一連の作業を、指導スタッフが実際にやってみる、できるようになるということを徹底しています」(森光氏)。

実践研修には点検からタイヤ・油脂類の交換などの整備作業も含まれており、性別に関係なくおこなわれる。これらの研修によって、「スタッフは自信を持って販売店を指導できるようになった」(森光氏)という。

◆定期点検入庫率90%以上達成、来店60日以上の長期フォロー成約率アップ

販売や入庫の実績としてe-CRBの効果が明らかになり、スタッフは自信を深めつつある。

「まずサービス入庫については5000km点検・1万km点検はチャネル平均で90%以上の入庫率を達成しています。また依頼修理など点検以外のサービス入庫そのものも、順調に伸びてきています」(森光氏)。

販売面ではどうか。「総受注の60%以上がi-CROPのフォローによるものでして、法人客が2割ぐらいと仮定すれば、かなりの部分で売上げに貢献してると言えます」(森光氏)。内訳を見ると特に顕著なのは来店後60日・90日といった長期フォローの成約率の上昇だ。「i-CROPによる長期フォローが受注に確実に結びついている実体も明らかになっています」。

今後の展開としては、「『カムリ G-BOOK智能領航』に搭載のG-BOOKサービスが5月より始まります。通信機能付車載機のメリットを活かして位置情報やダイアグ情報をリアルタイムで取得し、e-CRBと連携してより高度なCR活動を進めていきたいと考えています」(森光氏)。

◆自主研究会の活動がSLIMを生んだ

また広汽トヨタでは、上に述べたような、新規販売店への導入支援や既存店舗への定着を図る指導活動と並行して、e-CRBをより高度化するための取り組みもおこなわれている。2008年4月に組織された「e-CRB自主研究会」がそれだ。

自主研では、業務改善/BP(鈑金・塗装)改善、物流改善などの新たなサービス手法を開拓・開発している。販売物流統合管理システム(SLIM:Sales Logistics Integrated Management)や中国版G-BOOKもこの自主研の活動から生まれた施策だという。

その根底にあるものは、売りっぱなしビジネスに終わらない、定期的なカスタマーリレーションの徹底による顧客満足度の追求だ。

「SLIM もG-BOOKも含めて、e-CRBはいわゆるITではありません。お客様とクルマとディーラーとメーカーをつなぐことが、顧客満足につながる事実があり、e-CRBはこの理想を実現するためのパーツです。クルマを中心としたお客様とディーラー、この人と人との結びつきを変えようと、e-CRBと通じて一所懸命強調していきますよ」(友山氏)。

《北島友和》

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