ボルボに欠けていたのは、デザインのセクシーさだと思う。木を使った北欧家具はあんなに素敵なのに、鉄板をいじらせるとどうしてこうもヘタなのか。でも、『XC60』でそのあたりにも希望の光が見えてきたようだ。
だって、ちょっとぬめっとしてそそる要素が入ってきたんだもん。そのデザインをまとったのがSUVというのもいい。ひとを惹きつける力は得てして燃費だの、経済性だのといった「合理主義」から離れたところに存在するからだ。
大柄だけど、エンジンパワーは充分で、車体のサイズを感じさせない加速感。ターボの効きも自然でなめらか、6ATがそれを支えて、いい仕事しているなあ。そしてコーナリングでも、じわっと安定した足回りで、ばたばたしない操作感が頼もしい。こういうクルマを走らせていると、決められたモノサシでどんぐりのせいくらべをする日本人的価値観がばからしくなってくる感じ。精神的にひとを成長させてくれるクルマかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト
1962年横浜市出身。いま一番購買力があるとされるアラフィー世代を代弁する軽妙な論調に定評あり。交通安全啓蒙に力を注ぐほか、子供たちに命の大切さを伝えるノンフィクション作家としても活動。近著に『ハチ公物語 - 待ちつづけた犬 -』(講談社青い鳥文庫)。