【池原照雄の単眼複眼】期間従業員の採用再開と「脱派遣」

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【池原照雄の単眼複眼】期間従業員の採用再開と「脱派遣」
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4社が計2450人を採用

国内生産の持ち直しに伴い、自動車メーカーで非正規従業員の採用再開が相次いでいる。4月からのエコカー減税と補助金支給という経済対策が、小規模ではあるものの雇用の修復へとつながりつつある。採用では、各社ともすべて期間従業員としており、派遣社員の起用は見送っている。非正規従業員は直接雇用のみに転換するという点でも、好ましい展開だ。

期間従業員の新規採用に踏み出したのは日野自動車(約900人)、トヨタ自動車(約800人)、三菱自動車(約650人)、富士重工業(約100人)の4社。合計では約2450人の計画となっている。

三菱自動車は、今週から名古屋製作所(岡崎工場)で350人が就業、さらに11月からは300人が水島製作所に従事する予定だ。日野など残り3社では10月からの採用となる。

◆派遣社員の採用は見送り

自動車の国内生産は、世界市場の冷え込みに対処した在庫調整がピークとなった2009年2月には前年同月比56%減、3月は同50%減と1年前から半減した。その後は徐々に減少幅が小さくなり、7月は32%のマイナスまで回復している。

日本でのエコカー減税など、各国政府が実施した新車需要の刺激策が生産の持ち直しにつながっている。『プリウス』などハイブリッド車の受注が好調なトヨタは、10月の国内生産を1日当たり1万4000台程度とする計画であり、底だった3月からは7割近く増える。

同社の期間従業員はここ1年余り、大半が期間満了で契約を打ち切ってきたため、1年前の1万人強から8月末には約1300人まで減少している。今回、小幅だが昨年6月以来の採用を復活させることにした。

一連の採用で注目すべきは、「脱派遣」の動きだ。当欄ではかつて、『「雇用」に淡白になった自動車メーカー』(08年12月10日)、『「派遣」なくても製造業はやっていける』(09年1月21日)などで、非正規雇用については期間従業員が望ましいと指摘してきた。

◆直接雇用がもたらすメリット

製造現場にこそ日本メーカーの強さの源泉があるのに、そこで働く人を直接雇用せずに労務管理までアウトソーシングすることは、競争力の弱体化につながると考えるからだ。今回の採用再開では、従来も本体では期間従業員のみとしていたトヨタ以外の企業も派遣社員の採用は見送っている。

昨年秋以降には、悪質な派遣切りも見られたため、厚生労働省から「指導」を受けた自動車メーカーもあり、脱派遣への動きとなったようだ。

トヨタは、採用再開に当たり、過去の従事者を優先する方針という。800人の採用枠では多くの希望に添えないものの、直接雇用だからこそ、こうした「人と企業」のつながりが生かせる。

経験者は技能レベルも高いはずだし、即戦力として従事してもらえる。それも直接雇用してきたメリットである。内外の新車需要の回復力がまだ弱いため、業界としての雇用貢献には時間を要すが、非正規雇用の質的転換という点では一歩前進だ。

《池原照雄》

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