100社超のメーカーによる1364万台
2009年の新車販売で中国が米国を抜いて世界1となった。クルマ需要の新興諸国シフトを象徴するものだが、冷静になる必要もある。
今なお100社を超える自動車メーカーが存在するという混沌のなかで1000万台をゆうに超える世界最大マーケットが誕生したのである。この中には、われわれがイメージするクルマからは相当かけ離れた品質のものも存在する。日本メーカーは沈着に、この巨大市場に向き合うことだ。
中国自動車工業協会の統計によると、2009年の同国新車販売台数(輸入車を除く国内生産車)は前年比46%増の1364万台だった。前年を21%下回り、1043万台にとどまった米国を大きく引き離した。
2008年の金融危機後に実施した排気量1.6リットル以下の小型車を対象とする「購置税」(自動車取得税に相当)を10%から5%に引き下げるなどの需要喚起策が効いた。ボリュームゾーンと呼ばれる中間所得層のマイカー購入意欲を大いに刺激した格好だ。
◆2割伸ばしても低成長?
同税の優遇措置は2009年末で終了したが、引き続き税率7%による減税が実施され、2010年の需要にも好影響となりそうだ。伸び率を1割と低めに見ても2010年は1500万台の市場規模となり、回復テンポが遅い米国の不振をカバーする存在となる。
各社の公表による2009年の中国での販売実績には大きな差が出た。政府の管理下で再建を進める米GM(ゼネラルモーターズ)は7割近く、韓国・現代自動車は8割の伸び率と市場の成長を大きく上回った。日本勢では日産自動車やマツダが4割程度と市場並みの伸びを確保する一方、トヨタ自動車とホンダは2割強と明暗が分かれた。
市場の伸びに追いつかないのは、減税対象となった乗用車の品揃えや、需要の伸びを支える内陸部での販売ネットワークの差など、どこかに問題があるのだろう。だが、考えようによっては2割というのは極めて高い成長率だ。
◆上位6社で半数に満たない群雄割拠
市場が過熱した時は、収益管理がおろそかになりやすいし、品質を犠牲にすれば構築してきたブランド力も短期で毀損してしまう。こうした時こそ、自社のペースを見失わない舵取りが求められる。
中国の民族系大手メーカーですら、日本車の「そっくりさん」を半値程度で売り、正規のディーラーがその日本車のエンブレムを取り付け、ユーザーも平然と喜んでいるというマーケットなのである。市場全体の急成長も、100社を超えるそうした民族系メーカーの“頑張り”による。
2009年の上位6メーカーの販売総数(各社発表ベース)は約610万台で、市場全体の半数にも満たない。市場が成熟した国では上位6社だと8割から9割を占めるのが自動車産業の特質でもある。中国は良くいえば群雄割拠だが、今後は民族系メーカーの淘汰・再編が進み寡占化は必定。足元の販売実績に一喜一憂することなく、自社の理念を拠り所にマイペースで進む企業が、寡占が進んだ果ての果実をつかみ取るはずだ。