昨年経営統合を果たしたケンウッドとJVCだが、製品開発においてはそれぞれのブランドを活かした展開することをすでに明らかにしている。とくにカーエレクトニクス分野は両ブランドの活かしつつ、それぞれの得意分野で販路を拡大。カーナビゲーション分野は成長商品として位置付け、両ブランドを合わせて年間100万台の売上を目指している最中だ。
そんな中、JVCはAV一体型ナビゲーション『KW-NT3HDT』を2010年3月に北米で発売する。価格は1199.95ドル。このモデルで注目すべきは、北米でオンエア中のHDラジオに標準で対応し、同時にリアルタイムの交通情報や、ガソリンの価格情報、天気情報などを無料で取得可能としていることだ。
これまで北米で交通情報といえば、FM多重を利用するMSNや、衛星ラジオ・XMがサービスしているが、両サービスとも有料。しかも、MSNは今秋にも情報提供が打ち切られることになってしまった。やはりお金を支払ってまで交通情報を必要としているユーザーはそれほど多くなかったということだろう。
それに対し、KW-NT3HDTが採用しているHDラジオでは、この情報の費用として購入時にこれらの負担金を含む形を採る。つまり、ユーザーが直接料金を支払うことはなく、ちょうど日本のVICSと同じような関係にあると言っていい。カバーエリアは全米の主要都市を対象とし、地図上には日本のVICSのように道路沿いに渋滞状況を表示し、交通規制なども具体的に示される。また、指定した路線の交通情報をリストとして表示することもできる。
HDラジオはホーム用ラジオでは普及があまり進んでいないものの、「車載においては着実に普及が進んでいる(JVC関係者)」模様で、とくに「Tagging」機能の搭載は、iTunesとの連係も可能にする機能として人気を呼んでいるという。ナビ機能は、北米+ハワイ州+プエルトリコを対象に600万件以上のPOI情報を収録。名称や住所、電話番号、周辺検索といった標準的な目的地検索機能を装備。PCで検索したグーグルマップ上からPOI情報をSDカード経由で転送することもできる。
HDラジオはデジタル放送ではあるが、従来のアナログ放送のサイドバンドにデジタル信号を載せる方式を採用しており、そのため周波数は従来のまま使用することが可能。デジタル波は電波が弱くなると途絶えるが、代わりにメインのアナログ波に自動的に切り替わる。アメリカではAM/FM放送局の大半がこの方式を採用して放送を行っており、将来的にはデジタル放送へ一本化される見込みだが、まだ具体的な切り換え時期は示されていないという。HDラジオの受信料は無料。