2009年度から自動車アセスメントに導入された試験項目のうち、実車を使用しないで行うものが「後面衝突頚部傷害保護性能試験」だ。試験車種の前席シートを用い、実車と同様の装着状態で台車上に固定。この台車に衝突材を打ち込んで追突を再現する。
後面衝突頚部傷害保護性能試験という非常に長い名称となっているが、ひらたく言ってしまえば「むち打ちに対する乗員保護性能がどの程度あるのか」を調べる項目。実車を使った試験ではないが、試験対象車種の前席シートを使い、実車と同様の設置状態を試験台車上に再現する。
試験はこの台車に高圧空気で衝突材を打ち込むスレッド(HYGE)試験機を用いる。衝突材の発射速度は17.6km/h。これは停止状態(ブレーキ解除状態)のクルマに対し、後続車が約32km/hで追突した衝撃に相当するという。
実車を用いた試験も導入検討段階では行われているが、スレッド試験機の結果と大きく違いがないことから、試験コストを削減する意味からもこちらが選ばれたようだ。台車に固定されるシートの位置については、メーカーが推奨するものとなっている。
車両側のレーダーと連動し、衝撃防御の最適位置までヘッドレストを自動的に動作させる“アクティブヘッドレスト”装着車はまだ試験対象となっていないが、これについて自動車事故対策機構では「メーカーが指定する防御最適位置までヘッドレストが可動したと想定し、その状態で固定して行うことになるかと思われる」としている。
実際の試験はあっという間に終了し、試験後もダミーの状態はほとんど変化の無いように見られるが、交通事故による頚部傷害は事故被害者の大多数を占める。この試験で得たデータがむち打ち被害者を将来的に減らすことにつながる。そうした意味では地味ながらも重要な試験といえるだろう。