近鉄親会社支配にひずみ?

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「監査のたびに、隠蔽改ざんを繰り返し、見抜けなかった」。近畿日本鉄道100%出資の子会社「メディアート」(大阪市天王寺区)が8年間に渡り、架空売上げ計上を繰り返してきた件で、近鉄はこう弁解した。

粉飾を指示したとされるのはメディアート前社長のA氏(61)だ。A氏は1993年に近鉄から出向し総務局長に就任。2003年に社長となり、今年2月2日の株主総会で解任されるまで、不正を続けていたとされる。約63億円の架空計上は02年から始まっているが、同社はすべてA氏のやったことだとして刑事告訴を検討している。

メディアートは交通広告を主体とし、近鉄の主な広告宣伝業務を請け負うほか、店舗内装も手がけていた。A氏は「内装工事などの架空取引や売上げ計上時期の前倒しなどで黒字を粧っていた」(同社秘書広報部)という。動機は「一度赤字を出すと、赤字体質になってしまうからというものだった」(前同)と、明かす。

メディアートの経営陣は11人の役員で構成されるが、社長を始め近鉄からの出向者は4人。そのほかに4人が近鉄本体と役員を兼務する。同社とメディアートの人事交流はきわめて密接で、近鉄の小林哲也現社長もメディアートに在籍したことがある。粉飾決算はそんな関係の中で8年間続いた。

最近の近鉄グループは、子会社の不祥事が続いている。昨年11月にはビル管理や警備業の「近鉄ビルサービス」(大阪市中央区)で経理担当者による約10億円の着服が見つかった。近鉄ビルサービスは近鉄の連結決算子会社だ。この事件を端緒に、近鉄は「各グループ会社のさらに厳しい監査を行った」結果、メディアートの架空売上げが発覚することになったというのだが、一連の不正が近鉄本体に与える影響は深刻だ。

親会社と子会社プロパーの格差が広がる中で、親会社から出向者には、さらに親会社からの重圧がのしかかる。そんな中に企業内モラルの低下はなかったのか。同社のグループ統治能力が問われている。

《中島みなみ》

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