日本のクルマ好きが期待する“アメ車らしいアメ車”の作り込みにかけては、GMが一番うまいと思う。
フルサイズのピックアップやSUV、フルサイズのサルーン、魂のスポーツカー、などなど。それらがGM破綻のシンボルに見られがちなのは時代の皮肉だが、クルマの本質的な魅力を否定するわけにはいかない。『コルベット』然り、『シルバラード』然り、『ドゥビル』然り。そして新生GMの日本における第一弾、蘇った『カマロ』もまた然り、である。
とにかく、乗っていて気分がいい。オレが乗ってるクルマを見てくれ!という高ぶった心地になる。観客など必要ない。そう思って乗っているだけで幸せ。加速すれば、自然と“うぉーっ”と叫んでいる。ある意味、クルマに乗るということの、目的地へただ向かうといった機能以上の魅力を、単純に実現しているクルマなんだと思う。
しかも、新しいカマロは、上っ面だけのアメ車じゃない。単なるリバイバルファッションでもないのだった。新しいアーキテクチャが生み出す走りは、サーキットでも楽しめるほど官能的なレベルが高い。特にV8の方は、60、70年代の『トランザム』シリーズに出場していたマッスルカーを彷彿とさせる走りをみせる。理屈抜き、現状認識抜き、ややこしい未来議論抜き、で楽しい。
クルマを動かす喜びを忘れかけている人にこそ、乗って欲しいと思う。できれば、ハッとするほど鮮やかなボディカラーを選んで。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。