[交通とまちづくり]ライトレールの成功、富山市の危機感

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ライトレール導入の成功例として代表的な富山県富山市。このライトレールを導入した背景には、県庁所在地においてもっとも人口密度が低いという問題を解決することにあった。

[写真:富山市の森市長]

13日、島根県松江市にて「松江市の交通とまちづくりを考えるシンポジウム」が開催。その中の基調講演「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」にて、富山市長の森雅志氏が述べた。

富山ライトレールは2006年に富山市に開業したライトレール。廃線となったJR富山港線の跡地と道路上を通る全長7.6kmの路線で、13の停留所を設置した。さらに、2009年には、再開発地域にあらたな路線を敷設し富山地方鉄道の路面電車を短絡。環状線として運行する「セントラム」も供用を開始した。

富山県は、道路の整備率や1世帯当たりの実収入が全国平均よりも高く、郊外の土地が安いということもあり、持ち家率が全国で1位だ。一見すると住みやすく思えるが、人口密度が1ヘクタール当たり40.3人で県庁所在地では最も低く、中心部が衰退しているという問題がある。

森氏は、「これ以上、人口を拡散させるわけにはいかない」と、この現状に危機感を募らせた。郊外に人口が分散すると「除雪やゴミの収集、下水道の維持管理など、行政の管理コストがかかる」、中心部の衰退が進むと「地価が低くなり、投資が呼び込めない」とするのだ。

このほかにも、富山県の1世帯あたり1.74台という自動車保有(全国で2位)も問題となってくる。これにより鉄道やバスの公共交通は利用者が減少し、減便や廃線を余儀なくされている。市の調査によると、3割の人はクルマを自由に使えない状態だとしており、このような市民が不便を強いられている。

この中心部の衰退、人口の拡散、公共交通の衰退の問題は、人口減少と高齢化の進行により、将来的には現在よりも深刻になってくると予測される。

そこで富山市が掲げたのが、「コンパクトな街づくり」だ。その基本方針は、富山駅を中心に放射状に交通機関を伸ばし、主要駅(停留所)に住居、商業、業務、文化などの都市機能を集約させるというもの。具体的には、公共交通機関が便利に利用できる(鉄道は駅から500m、バスは停留所から300m)人口を現在の約3割から、20年後には約4割に高める。

これを実現させるための施策として、森氏は公共交通の活性化、公共交通沿線地区への居住促進、中心市街地の魅力的向上の3つをあげた。

この公共交通の活性化の1つが富山ライトレールというわけだ。通常は、鉄道が廃線になるとバス路線で補う。しかし富山市は「公共交通を大事にする」(森氏)という観点から廃線跡に専用軌道を敷設し、ライトレールとした。富山ライトレールのダイヤは、昼間は1時間に4本、朝夕は6本。富山港線時代と比べると大幅に増発している。バス路線で同等の輸送を行おうとすると、遅延が発生するのは目に見えている。

富山港線時代と富山ライトレールの利用者数を比較すると、平日では約2.1倍、休日では約3.8倍に増えている。特に興味深いのが、「昼間の時間に高齢者が乗車するようになった」というデータ。これまでよりも高齢者が外出をするようになったと思われる。「5 - 10年たってから統計を取ると、沿線の要介護認定の割合が低くなるかもしれない」との期待も込めている。

さらに、旧富山市地域では住宅着工件数が0.78倍に減少したのに対して、沿線は1.61倍に増えている。富山市民はライトレールを受け入れているようだ。

公共交通の活性化として、ライトレールのほかに、バスや既存の鉄道、自転車にも力を入れている。

バスの事業では、65歳以上の高齢者を対象に年間500円で「おでかけバス事業」を発行。これは、中心部で乗降すると、運賃が一律100円になるという定期券だ。森氏によると、「富山市は、ほとんどのバスと鉄道は富山駅に集約している」という。そのため、富山駅で乗り換えると富山市内のどこでも200円で移動できるようになる。

既存の鉄道では、JR高山本線で社会実験を実施。1日34本だった鉄道を60本に増便させた。また、自転車をレンタルするコミュニティサイクルシステムも導入。市内に15か所設け、10台を常備している。これにより、クルマがなくても町の中心部を移動する手段を確保している。

このように交通システム、特にライトレールを中心に街づくりを進める富山市の森市長。「大都市では、子育てができないような時代が来る。地方都市は、それを見越して受け入れる準備をするべき」だと訴えた。

《安達崇徳》

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