【池原照雄の単眼複眼】充電器の「世界標準」には、まずEVをしっかり売る

エコカー EV
向かって左より富士重馬渕晃常務執行役員、三菱自動車益子修社長、東京電力勝俣恒久会長、増子輝彦経済産業副大臣、日産自動車志賀俊之COO、トヨタ嵯峨宏英常務役員
向かって左より富士重馬渕晃常務執行役員、三菱自動車益子修社長、東京電力勝俣恒久会長、増子輝彦経済産業副大臣、日産自動車志賀俊之COO、トヨタ嵯峨宏英常務役員 全 3 枚 拡大写真

「大志」をもつのは重要だが…

電気自動車(EV)の急速充電器の標準化に取り組む「CHAdeMO(チャデモ)協議会」が発足した。まず国内での規格統一作業を進め、それを元に「世界に羽ばたかせたい」(協議会会長の勝俣恒久東京電力会長)と、世界標準を狙う。

だが、急速充電器はEVの普及を左右するだけに、それぞれの国や地域で自国産業に有利な仕様が採用される可能性が強い。「世界標準」の大志をもつのは重要だが、EV投入で先行する日本の自動車メーカーが、世界各地でまずEVそのものの着実な販売に取り組むことだろう。

チャデモは、東京電力が2006年から富士重工業(スバル)や電機メーカーなどと協力して開発した急速充電器の仕様。EVに搭載された電池の電力残量や充電具合などを独自のプロトコル(通信手順)で交信・感知しながら充電を進める。

異なる電池に対して一定の汎用性をもっているが、「日本規格」として統一するには、さらに多くの自動車メーカーや電機メーカーなどとのコンセンサスづくりが必要であり、協議会の発足となった。

◆自国産業保護の障壁にもなる

EVの充電は、家庭やオフィスなどの電源(日本では100Vまたは200V)を利用する「普通充電」と、高圧電源による急速充電がある。普通充電ではほぼ1晩をかけて充電するが、出先で使う急速充電は、現状のEVだと30分程度で8割までの充電ができる。

フル充電からの航続距離が実用的には100km程度しかない今のEVにとって、急速充電器のインフラ整備が普及のカギとなる。従って、国や地域によって急速充電器の仕様が異なると、販売地域ごとにEV側でその仕様に合わせるか、当該地域での販売を断念するしかない。

EV開発で遅れを取っている国の政府と自動車メーカーが結託して独自の急速充電器規格をつくれば、外国製EVにとって市場参入の大きな障壁になってしまう。そうした産業保護政策のみならず、EVの設計思想や電力インフラの違いもあって世界で歩調を合わせるのは難しい。

◆アドバンテージを生かすには

トヨタ自動車の嵯峨宏英常務役員は「世界ですべて統一化するというのは、ほとんど不可能と思う。たとえば欧州と一口に言っても国によって事情は異なる」と指摘する。実際、ドイツでは「交流・直流変換」という急速充電器の重要な機能をEV側にもたせる規格案が有力となっている。

一方でフランスは、日産自動車とEVを共同開発するルノー、三菱自動車工業の『i-MiEV』をOEM調達するPSA(プジョー・シトロエン・グループ)の存在があり、チャデモが根付く可能性が高い。

「世界標準」の奪取に争いはつきものだが、幸い日本勢はEVの市場投入や急速充電の規格統一で「他の国より先んじている」(志賀俊之日産COO)アドバンテージがある。三菱自動車の益子修社長は「当社は海外でもEVと急速充電器をセットで買ってもらえるよう取り組んでいる」という。現時点では、そうした先行の利を精一杯生かすことだ。

《池原照雄》

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