【ホンダ CR-Z 試乗レポート】“エブリデイスポーツ”に込められた思い…竹岡圭

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6MTとCVT、どちらを選んでもスポーツカーと思えない使い勝手の良さがあるという
6MTとCVT、どちらを選んでもスポーツカーと思えない使い勝手の良さがあるという 全 24 枚 拡大写真

近未来的な演出と付き合いやすさを両立する“エブリデイスポーツ”

『CR-Z』はベースとなっているのが5ナンバーサイズの『インサイト』なので、ボディサイズはコンパクト。歩行者保護などの安全性は保ったまま、低く構えることに成功したデザインは、どこから見ても確かにスポーツカーだ。そこに空飛ぶCMさながらの、新しい乗り物感が上手く盛り込まれている。

画像24枚:ホンダ CR-Zと竹岡氏

その空気感、ドアを開けても損なわれることはない。本物の錫を使ったメッキ処理のインテリアに、ドーンと張り出した3Dメーター、クルマの状態が一目でわかるマルチ・インフォメーション・ディスプレイ、運転席から手が届くところにスイッチが並ぶ、コクピット感あふれるレイアウト。大人が満足できる質感に、ゲーム感覚のスパイスをふりかけることで、近未来的なスポーツカーに乗りこんだ高揚感を、白けずに楽しめる雰囲気作りがされている。
 
しかし、CR-Zは特別なクルマではない。開発者が「エブリデイスポーツ」と謳っているだけあって、毎日の付き合いやすさにも、かなりのウエイトが置かれているのだ。

◆女性には見逃せない、毎日の使い勝手をパッケージング
 
例えば乗降性。スポーツカーの場合、ドスンと尻餅を付く様になりがちだが、さほど腰を落とさずにスッと乗り込める。かといって、一度座ってしまえば、着座位置が高くて落ち着かないなんてことはない。絶妙な人間工学的ポジションが探られているのだろう。ラチェット式シートリフターと、チルト&テレスコピックステアリングを調整すれば、視界はきちんと保ちつつ、自然に操れるスポーツカーポジションが取れるのだ。

ちなみにシート自体は、私の体格だと肩周りと腰周りに、もう少しホールド感が欲しいほど大きい。逆に欧米人並みの体格の男性も、余裕を持って座れるということになる。

相反して、後席は顔を上げて座れないほど狭い。完全な2+2の、せいぜい小学生までに対応できる、エマージェンシーシートだと割り切ったほうがいいだろう。ところが、これを逆手に取ると、後席に置いた荷物を運転席から引き寄せた時に足元に落ちる心配がないラゲッジスペースとなる。実際、スポーツカーが好きな方々が開発したのだろうと思える、発想の転換というワケだ。

またラゲッジと言えば、運転席から後席の背もたれを倒すと、ゴルフバック2個が搭載できるほどの大容量が確保されている。これもエブリデイスポーツとしては、高ポイントな一面だ。さらには、スポーツカーとは思えないほど、ポケッテリアが用意されているのも、特に女性にとっては見逃せない。つまり、毎日の使い勝手が、スポーツカー、しかもハイブリッドカーのパッケージングの中に、見事に収められているというワケなのだ。

◆“エコ”と“スポーツ”、ふたつの世界に一石を投じる走り
 
そして走り出すと、さらにエブリデイスポーツに込められた思いがよくわかる。6MTは言うまでもなく、CVTモデルにもありがちなモタツキ感がなく、スムーズに発進&変速できる。アイドリングストップ機構が付いているにも関わらず、渋滞などのトロトロ走行時でもドタバタすることがないし、6MTはヒルスタートアシストシステムが付いているので、坂道で下がってしまう心配がない。どちらを選んでも、スポーツカーとは思えないレベルの普段使いが約束されているのだ。

かといって、スポーツカーとしてヤワということではない。エンジンを掛けるとまず選択されるNOMALモードでも、ある程度のところまでは行けてしまうし、3モードドライブシステムをSPORTモードにチェンジすれば、驚くほど性格が変わる。

ドライバーの気持ちを掻き立てるがごとく、アンビエントメーターがレッドに光り、低速トルクがモリモリと盛り上がる。モーターのアシストがググッと後押ししてくれるので、コーナーでの立ち上がりがとにかく素早い。逆にストレートは、6000回転付近で頭打ちの感じで、従来の高回転域が得意なホンダのスポーツカーとは別物だ、という頭の切り替えが必要ではあるが、そこまでの立ち上がりの速さや伸び感は、2リットル・NAエンジン並みと言うのが納得できるパワフルさ。ステアリングの手応えもドッシリとしたものに変わり、グイグイと曲がっていってくれるダイレクト感は、キビキビとしたコンパクトスポーツカーそのものなのだ。

低排気量だからこそ全開にできる爽快感と、ビシッと決まる小気味よいコーナリング性能。ハイブリッドカーに、こんな世界があったとは…。エコの世界に、そしてこれからのスポーツカーの世界に、新たな一石を投じた記念すべき一台、それがCR-Zなのである。

竹岡圭|モータージャーナリスト
自動車専門誌を中心に、女性誌やTVなど、幅広いメディアでレポーター・コメンテーターとして活動している女性モータージャーナリスト。インプレッションやコラム、カーグッズ、旅行など、カーライフ全般を女性の視点からレポートしている。快適なカーライフをサポートするべく、実際にユーザーにアドバイスすることも大切にしている。モータースポーツにも積極的に関わり、自身も国際C級ライセンスを所持、チーム監督・ドライバーとして楽しんでいる。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J.)理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《竹岡圭》

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