【ホンダ CR-Z 開発者対談その1】スポーツカーではない、ハイブリッドならではの楽しさを

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CR-Zはハンドリングの楽しさを目指した、と語る鳥飼氏
CR-Zはハンドリングの楽しさを目指した、と語る鳥飼氏 全 24 枚 拡大写真

ホンダが2月25日に発売した新型コンパクトハイブリッド『CR-Z』。目指したのは「スポーツカー」ではなく「走る楽しさを味わえるクルマ」だったという。「スポーツ」とは何か、そして「楽しさ」とは。今回、モータージャーナリストの西川淳氏と、CR-Zの“走り”の開発を主に担当した四輪R&Dセンター第1商品開発室・主任研究員の鳥飼輝一氏との対談が実現した。

◆コンパクトで運転が楽しいクルマを作りたかった

西川:鳥飼さんのCR-Z開発における仕事内容について、まず教えてください。

鳥飼:運動性能の方向性を決めて、できたものをコンセプトに合わせて評価するのが我々の部署の仕事です。テストなども含めて、それらの全体的なマネージメントが私の役割になりますね。

西川:主にクルマの走りの性格を決められているわけですね。どうやらCR-Zは、スポーツカーと呼ばれたくないみたいなのですが・・・(笑)。最初からそうだったのですか?

鳥飼:そうですね、コンセプトの頃からそれはありました。もともとホンダって、コンパクトスモールが好きじゃないですか。でも、最近はよく、ホンダらしいクルマがないねと言われたり、若者のクルマ離れだとか国内ではマニュアルミッションのクルマもなかったりして、なかなか楽しいクルマもなかったりしますよね。そんな中で、ホンダが好きなコンパクトスモールの楽しいクルマってやっぱり欲しいよね、という話になり、じゃあどんなクルマがいいのか、方向性を考えてみようよ、となったわけです。

西川:でも、ホンダがスポーツと言いだすと・・・。

鳥飼:ね、どうしても走り重視というか、タイプR系のようなクルマをイメージされますでしょう?

西川:確かに、してしまいますよねえ。

鳥飼:もちろん、そういう方向性でクルマを作るのもありだと思うんです。でも、時代の流れでスポーツを前面に押し出したクルマが売れなくなっているのだとしたら、そうじゃなくても楽しいと思ってもらえるクルマって本当に無いんだろうか、と考えてみたんですね。しかも今って環境性能も避けては通れません。じゃあ環境と楽しさを両立するクルマってあるのだろうか、からスタートしました。

西川:そういう意味では、ハイブリッドシステムを使うと決めた時点で環境性はまずクリアになる、と?

鳥飼:いろんなクルマを検討しみて、出してはポシャってを続けるなかで、ハイブリッドシステムをハードに使うということは自分でも絶対アリだと確信しました。

西川:つまり、スポーツというよりもハイブリッドと言った方が入り口としては入りやすい。

鳥飼:大きな意味ではクルマの楽しさへのひとつの入り口になりますね。今、他にないわけですから。まず入り口の幅を広くして、このクルマをきっかけに、いろんな楽しいクルマが増えてくれればいいなと思っています。

◆MTでハイブリッド車を“操る”楽しさを

西川:CR-Zで目指した“楽しさ”っていったい何だったのでしょうか。

鳥飼:やっぱり、ハンドリングの楽しさ、ステアリングフィールの楽しさでしょうね。動力性能で官能的な楽しさを提供するというのもあるでしょうが、車速を変化させるだけじゃなくて、コーナーを気持ちよく抜けていく楽しさってあると思うんですよ。その場面までハイブリッドで繋げることができれば、その楽しさは必ずお客さんに伝わるじゃないか、そう考えました。

西川:ほかに目指した“楽しさ”ってありますか?

鳥飼:せっかくモーターがあるわけですから、その特徴を生かした楽しさも演出したつもりです。低回転領域やハイギアードでもぐいぐい加速する感覚って、1.5リッターの普通のガソリンエンジンじゃ味わえませんよね。これは、今まで感じたことのない楽しさだと思うんです。

西川:それは感じましたね。ただ、CVTよりもMTの方がよりハッキリと分かって楽しめたというか・・・。

鳥飼:確かにそうだと思います。世の中のハイブリッド車って今、ほとんどCVTじゃないですか。だからこのクルマでは、デザインと合わせて考えても、絶対MTが必要だと最初から思っていました。まずはMTをちゃんと作りたいと言い続けてやってきましたから、それは非常によく分かるようにできたと思うんです。MTは一度やめていますから、また作ってもらうのは、とても大変でしたけれどね(笑)。

西川:オススメはとにかくMTということですね。

鳥飼:CVTはアクセルワークに対してエンジン回転数が変わっていくので、MTよりもモーターの威力が分かりづらいんですね。それは仕方ないと思います。ただ、モーターを無くすともっと走りませんよ(笑)。造り手の側からすれば、MTにぜひ乗ってみてもらって、ダイレクトに今までのクルマとの違いを感じて欲しいものです。

◆どちらを選べばいいのか、悩ましい

西川:その目論みがズバリ的中したというか、MTが注文の4割強を占めていると聞いています。今の時代、ありえないくらい凄いことですよね。

鳥飼:それはもう嬉しくてしょうがないですねえ。ただ、CVTにはCVTのよさがあると思っています。町中での燃費は絶対CVTの方がいいですし、ハンドルに集中してコーナーを楽しめるというメリットもある。それに、走りだって全般的にスムースですから。

西川:だから、どちらにすればいいのか悩ましいんですよ。どっちにも長所があるというか、欲しくなる要素がありますから。

鳥飼:じっくり乗り比べてしまうと、ハマりますねえ(笑)。やっぱり、ライフスタイルに合わせてお選びくださいというしかありません。本当はMTとCVTとでそれほど区別するつもりはなかったし、同じ走りになるように作ったつもりなんですが、どうしてもMTの方が回頭性はいいし、逆にCVTはどっしりと走る感覚があります。まあ、CVTに乗る方はしっとりと走るのを好まれる方が多いんじゃないでしょうか。

西川:人それぞれの使い方やライフスタイルにあった方を選べばいい。

鳥飼:とはいえ、実際に乗って確認してもらいたいので、試乗車もMTをできるだけ拠点に1台は準備してもらうようにお願いしているところです。

《西川淳》

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