国際航業、太陽光発電に本格参入 3年で170MWへ

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GISのノウハウを活かし、宮崎ソーラーウェイでの実証結果をもとに日本全国へ展開すると発表した(4月6日)
GISのノウハウを活かし、宮崎ソーラーウェイでの実証結果をもとに日本全国へ展開すると発表した(4月6日) 全 5 枚 拡大写真

航空測量、GIS(地理情報システム)ソリューション大手の国際航業は4月6日、温室効果ガス削減、脱石油に向けたグリーンインフラ事業への本格参入を発表した。その中核となるのは大規模集積型のメガソーラーを含む太陽光発電インフラ事業で、今後3年の間に170メガワットを導入し、グローバルで売上高38億円、営業利益13億円と、高収益化を狙うという。

太陽光発電にとって、設置場所の選定や設備の方角、仰角設定などはソーラーパネルや蓄電装置、電力安定化装置などの技術以上に重要なポイントである。どんなに高性能な太陽光発電ユニットも、光がきちんと当たらなければ発電量はガタ落ちになってしまうからだ。山下哲生会長は「地形や日照など多様なデータからなる当社のGISのノウハウは太陽光発電の効率を高めるのに有用な技術。以前からソーラーパネルを設置する事業者向けの地理情報提供のニーズはあった」と、高度なGISをベースに、質の高い太陽光発電事業の展開に自信を見せた。

同社の子会社である宮崎ソーラーウェイが建設してきた実証試験用太陽光発電所、宮崎ソーラーウェイ都農(つの)第1発電所が4月8日に竣工する。この発電所は出力50kWと小さいものだが、宮崎県、九州電力と共同で潮風や落雷、強風など自然環境に対する耐候性をテストするための重要な施設だ。ソーラーパネルはインフィールドでの比較試験のため、結晶シリコン系、薄膜シリコン系、有機薄膜系の3種類を採用している。

この都農第1発電所は宮崎のリニアモーターカー実験線施設を再利用して作られているのも特徴。「リニア実験線のような廃設備、また産業廃棄物処理地や土壌が汚染されている工場跡地など、スペースや設備を有効活用する形でどうやって太陽光発電所を作っていくかということも模索しています」(国際航業関係者)

リニア実験線のように狭く、細長い高架施設に太陽光パネルを設置するといった特殊な施工は、やってみると意外に難しいという点が多いという。そうしたノウハウの取得もつの第1発電所の建設目的の一つだったという。得られたノウハウをもとに、出力1メガワットの都農第2発電所を来年に完成させる予定だ。

台湾出身の呉文繍(ウー・ウェンショウ)社長は、「宮崎ソーラーウェイで確立した手法を“宮崎モデル”と名づけて、(土地、施設の有効活用のニーズが大きい)日本全国へ展開したい」と語る。国内だけでなく、すでに展開ずみのアジア、中国、欧州に加え、オバマ大統領の“グリーンニューディール”で太陽光発電のニーズが飛躍的に高まっているアメリカにも進出を決めている。

クリーンエネルギーへの投資が爆発的に高まっている中、異業種からエネルギーソリューションビジネスに参入する企業が続出している。太陽光発電のみならず、風力発電や原子力発電など巨大施設の立地選定に欠かせないGIS技術を持つ国際航業のクリーンエネルギービジネスは、興味深いケーススタディとなりそうだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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