【スバルの先進安全技術】高機能化と低価格化で普及への道筋を付ける…アイサイト

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歩行者も検知するようになった第4世代のADA「アイサイト」
歩行者も検知するようになった第4世代のADA「アイサイト」 全 18 枚 拡大写真

『EyeSight(アイサイト)』はフロントウインドウに設置した二つのCCDカメラで得た3D画像情報を元に前方の状況を認識、ドライバーへの警告や車両制御を行うスバルの安全システムだ。前身となるADAが初めて市販車に搭載されたのは1999年。『レガシィ』の進化とともに歩んで来たアイサイトの歴史を紹介する。

◆第4世代:カメラのみでプリクラッシュブレーキを実現、歩行者や自転車にも対応

第4世代に進化したのは2008年。名称は従来のADAからアイサイトへ変更された。第3世代にあったミリ波レーダーは廃止され、ステレオカメラに一本化。新開発3D画像処理エンジンの採用により、ミリ波レーダーで補ってきた悪天候下での検知性能もカメラのみで確保できるようになり、大幅なコスト削減や小型化を実現した。

その結果、この第4世代では世界で初めてステレオカメラのみで「プリクラッシュブレーキ」を実現。衝突するとシステムが判断した場合には、警報とあわせてブレーキ制御を行い、ドライバーの衝突回避操作をアシストするほか、同時に「全車速追従機能付クルーズコントロール」も実現した。

また画像認識というシステムの特性を活かし、対象とする物体が前走車のみならず、歩行者や自転車、車両近くの障害物まで含む点も、アイサイトの優れた特徴となっている。これによってペダルの踏み間違いによる急発進を防ぐ「AT誤発進抑制制御」も加えられた。

この第4世代ADAこと初代アイサイトは、4代目レガシィのモデルライフ終盤にあたる2008年5月にツーリングワゴン、B4、アウトバックの全ボディタイプに設定されたほか、2009年9月には7人乗りワゴンの『エクシーガ』にも搭載された。新型アイサイトがVer.2に対して、これはVer.1となる。

◆第5世代:ついに停止までブレーキ制御を行う「ぶつからないクルマ」へ

ADAとしては第5世代となるのが、この5月18日から5代目レガシィ(2009年発売)に搭載される新型『アイサイト』、商品名『アイサイト(Ver.2)』だ。基本的なシステム構成は第4世代(Ver.1)とほぼ同じだが、従来と大きく異なる点は、ついにクルマが停止するまでブレーキ制御を行うことだ。

新型アイサイトで最も注目すべき機能は、クルマが30km/h以下での走行中、「このままだと衝突」とシステムが判断すると、急制動によって車両を停止させ、衝突を回避する「プリクラッシュブレーキ」だ。第4世代(Ver.1)ではドライバーがシステムに頼り過ぎないように、速度は落ちても最終的には止まらない、という制御だったが、新型では言わば、止められるものは止める、という方向へ一歩踏み出したものとなっている。

同様に停止まで行う自動ブレーキの採用は、2009年に日本へ導入されたボルボ『XC60』の「シティセーフティ」が先行しているが、シティセーフティで衝突回避が可能なのは15km/h以下であり、また車両後部のリフレクター等を検知する赤外線レーザーレーダーを使うなど、その目的はあくまで4輪車への追突防止に絞られている。一方アイサイトでは30km/h以下で衝突回避(衝突直前での停止)を行うほか、第4世代のADA同様に、歩行者や自転車も検知対象とするのが目立った違いだ。

新型アイサイトにはこれ以外にも、ドライバーの急ブレーキを検知した場合、必要に応じて自動的にブレーキアシストを作動させる「プリクラッシュブレーキアシスト」を採用。また「全車速追従機能付クルーズコントロール」もさらに強化され、追従制御中の減速Gを高めて、スピードの上下が大きい渋滞した高速道路にも対応するほか、前走車の停止に応じて自車が自動的に停止した場合、停止状態を維持する機能も加えられている。

◆11年の時を経て

新型アイサイトでは、ミリ波レーダーを併用していた第3世代はもちろんのこと、第4世代と比べてもコストを大幅に低減している。第1世代のシステム価格は60万円あまり(他のオプション込み)だったのに比べて、現行レガシィのアイサイト搭載に要するエクストラコストは約10万円。こうした低コスト化は、新型アイサイトがABSやエアバッグのように「当たり前の装備」となる上で、最も大きな武器となるだろう。

ASV(先進安全自動車)の研究開発車として、スバルがステレオカメラを搭載してから13年が過ぎた。この間、自動車産業を取り巻く環境は、必ずしも順風満帆とよべるものではなかったが、スバルの開発陣は決して開発を放棄したり停止したりすることなく独自の技術であるステレオカメラ技術に改良を加えてつづけてきた。第5世代の新型アイサイトにより普及への道筋は付いたが、開発者たちはまだ前を向いている。今後の進化も大いに気になるところだ。

《丹羽圭@DAYS》

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