フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン(VGJ)が6月4日に日本に導入するコンパクトモデル、フォルクスワーゲン(VW)『ポロTSI』に搭載されるのは、「CBZ」型直列4気筒1.2リットルSOHC直噴ガソリンターボ、VWが言うところのTSIエンジンである。
VWはこの1.2TSIエンジンを、重要な世界戦略ユニットと位置づけている。ターボ過給によるダウンサイザー(排気量低減)コンセプトによって省エネルギー性能を高める一方で、新興国市場向けのエコカーに搭載するため、コスト削減を徹底的に進めたという。
「TSIエンジン開発で重視しているのは、技術水準の高い製品をアフォーダブル(お手頃)な価格で売れるようにすることだ。中国をはじめ、価格競争力が重視される新興国においても、1.4TSIはすでに価値のあるエンジンと消費者に認識され、商業的に成功を収めつつある。性能とコストを両立させた1.2TSIは、さらに広く受け入れられるだろう」
TSIエンジンの開発を主導してきたVWのエンジン技術者、ヘルマン・ミッデンドルフ博士は語る。
CBZエンジンは高い動力性能や省エネ性能などの付加価値とコスト競争力を両立させることで、さらに商品力を高めるというコンセプトで設計された。SOHC2バルブ、固定プロファイルカムシャフトのシンプルなシリンダーヘッドを持ち、ターボ過給器まわりも部品点数を極力減らすなど、徹底したコストダウンが図られている。
ポロTSIのマスメディア向け発表会場にはエンジンの実物が飾られていたが、ターボまわりは昔のエンジンの常識からは考えられないほど簡素に作られていた。知らずに見れば、自然吸気エンジンの補器類と見間違うほどである。インタークーラーもエンジンクーラントに放熱するコンパクトな水冷式だ。本国仕様を見ても6速MTモデルが3気筒1.2リットル+5速MTのモデルに比べて約20kg増と、重量増は最低限にとどめられていることがわかる。
このエンジンのもう一つの特徴は、中国をはじめ新興国において、オクタン価の低いガソリンを使っても問題が起こらないことを念頭に作られていることだ。中国のレギュラーガソリンの公称リサーチオクタン価は90だが、実際には89前後。そのガソリンを入れても作動するよう設計されているのだ。
もっとも、性能を十分に発揮するには95オクタン(欧州の標準的ガソリンに相当)が要求される。欧州でも91オクタン使用可となっているが、パフォーマンスは低下するという但し書きがなされている。日本ではレギュラー、ハイオク両対応をうたっておらず、ハイオク指定となっている。
「エンジンのエネルギー効率を高めるには良好な燃焼状態を作り出すことが重要。TSIが本来の高効率、高パフォーマンスを発揮するのは、やはり95オクタン以上だ。低オクタン燃料に最適化させるようなことは今も考えていない」(ミッデンドルフ博士)
日本で1.2TSIが積まれるのは、上位モデルである『ゴルフTSIトレンドライン』に続いて2モデル目。欧州流ダウンサイザーコンセプトでVWはどこまでセールスを伸ばせるか、要注目だ。